コラム オーリャ!

ニッケイ新聞 2006年8月22日付け

 「日本」の原風景は何か――。
 現在、来伯中の詩人、吉増剛造さんの映画「島ノ唄」。効果音や音楽を付けることなく、撮影中に入った音のみで映画が作られている。
 日本の南方の島々を巡る旅を追っての撮影。鳥の鳴き声、風の吹く音、人が草を踏み分ける雑音など、ささいな響きが臨場感を出す。
 日本にいた頃耳にしていたNHKラジオ「音の風景」を思い出した。
 薪が焼けてはじける音、小川の流れる音、鉄を打つ音などから、市街の様子や職人仕事の行程といった、一つの風景を紹介する。
 音を聞くだけで聴取者がその風景を想像できる。同じような背景を持つ人が聞いているからこそ、可能になることだと思う。
 海に囲まれた島での映画。浜辺に寄せては反す波の音に「日本」を懐かしく思い出した。(稲)