子供思う気持は共通=兵庫県教職員も参加=日伯教育シンポ

2006年8月24日付け

 第十七回日伯教育シンポジウムが十九日にCPP(パウリスタ教員団体)会館で開催され、来伯中の兵庫県教職員日伯教育文化交流団(田治米政美団長)四十四人が参加。会場にはパウリスタ教員団体、日伯教育連盟(UEBRAJA)などから約二百五十人の教師が集い、熱心に日本、ブラジルそれぞれの教育事情に耳を傾けていた。
 同シンポジウムには、マリア・ルシア・サンパウロ州教育局長官が出席。「〇八年の百周年に向けて、サンパウロ州内の学校約五千校、五百十万人の生徒とともに来年から日本文化のイベントを始める」と事業を紹介した。
 また、旧カンポス・サーレス校を「まべ・まなぶ美術館」に復元する計画、日本移民に関する本を出版すること、デカセギ子弟の不登校対策などを例にあげ、さらなる日伯の交流促進を訴えた。
 今年のシンポジウムのテーマは「人生にそなえて市民教育」。サンパウロ大学法学部助教授のダルモ・A・ダラーリ氏はブラジルにおける市民教育の形成過程を、歴史をおって説明。続く元サンパウロ州教育局長官のジョゼ・A・ピノッティ氏は、ブラジル教育の現状や問題点を指摘した後に、「サンパウロ自体が一つの学校であり、教育に対する姿勢、健康管理など社会全体のあり方が(教育に)重要だ」と述べた。
 大阪教育大学副学長の長尾彰夫氏は日本の教育改革、学力低下問題に触れ、「点数で測ることのできる学力でなく、社会のあり方を考えることのできる力、そういう学力をいかに伸ばすかが焦点となるべきだ」と訴えた。
 また、大阪市立大学名誉教授の桂正孝氏は、ひきこもりやニートの現状から、若者の社会的自立支援、キャリア教育のあり方を提唱した。
 講演後には会場の参加者から多くの質問が寄せられ、中途退学や教育基本法の改正について、全日制か多部制か、進学制か就学制かといった学校制度のあり方など、両国の教師は互いが抱える問題への理解を深めた。
 田治米団長は「国や制度が違っても子供を思う気持ちは同じ」と話し、ブラジルの子供と触れ合った感動、日伯教師同士の共通点など「教師それぞれが感じたものは、これから日本で花咲きます。多文化共生教育に役立てられる」と満足そうに意義を語った。
 事前にサンパウロ市内の公立校、私立校、赤間学院などを視察した交流団は、日本の学校との違いに驚き、ブラジル教師からの歓迎に感激したという。一行はイグアスー、マナウス、リオを視察し、二十五日に帰国する。