なまのブラジル文化学びに=愛知県の小学校教諭2人自費研修=デカセギ子女が〃居た〃現場=身を置いて理解深める

2006年8月29日付け

 「生」(なま)のブラジルの文化や言葉を学び、今後の授業に活かしたいとして、六日から来伯していた豊橋市立磯辺小学校国際学級担当の片桐孝雄教諭と半田市立横川小学校外国人指導担当の石原文代教諭が、このたび二週間の自費研修を終え、去る二十一日、二十三日にそれぞれ帰国した。「充実した研修生活が送れた」と笑顔の二人。「今回の経験を今後の学校生活でも活かしていきたい」という。
 片桐教諭は三回目、石原教諭は二回目の来伯。二人は二週間、ミナスジェライス州のベロオリゾンテ市でホームステイをしながら滞在。平日の午前に同地の東洋文化学院(ICO)に通ってポルトガル語を勉強し、午後は近くの公立と私立のブラジル人学校で過ごした。
 石原教諭は初めてブラジルの学校を見学。
 「日本とちがって、ブラジルの学校では、教員と児童の『きょり』(距離)がとても近い。先生が生徒一人ひとりに、頬にキスをして挨拶していたことには驚いた」と感想を語った。
 この他にも、教師が騒がしくしている生徒を廊下に出て行くように指示をした時も印象的だったと話す。
 「このような場合、日本だったら確実に生徒と子どもは険悪なムードになります。でもブラジルの先生は『いつもあんな感じだから』と笑顔。生徒も後腐れなさそうでした」。
 「日本とブラジルの小さな文化の違いをより知りたかった」という片桐教諭は、今年で二回目の学校視見学。
 実際の現場では、「ブラジルと日本の文化の小さな違いが原因で、トラブルになることがしばしば」と説明する。例えば日付の表記の仕方などもそうだ。日本では年から月と書いていくのに対して、ブラジルは逆に日にちから月、年と書く。「こうしたほんの小さな文化の違いは、実際にこちらに来てみないと実感できない」。
 また片桐教諭の話によれば「ブラジルから来てまもない児童は、日本の先生を冷たい人と思うことが多い」という。規則も厳しく感じ、言葉もわからない、コミュニケーションもうまくとれないと感じる児童は次第に学校へ通わなくなる。そのような児童の気持ちを汲み取り、時には教師が母語であるポルトガル語を使って話すことは大事だ。
 「これは児童だけにではありません。保護者に対してもです。ポルトガル語であいさつ一つする姿勢だけでも、大きな違いがある」と強調する。
 二人はポルトガル語の勉強だけでなく、一つひとつの教室をじっくりと見学できたと満足した様子。「ブラジルの〃普通〃の学校の雰囲気を知ることができた」と研修の意義を振り返った。
 「現場の人間が自発的に動いて少しずつ変えていく」―。在日ブラジル人子弟の教育問題が日本の学校現場で問題になるなか、最前線で働く教員が自発的にブラジルに来て、研修を行なう意義は大きい。
 「学校現場だけでなく、より日伯間の『人』の交流が深まって、互いの文化を認めあえる関係が大事になるでしょう」。片桐教諭は最後にそう話し帰国した。