平和への願い訴え=ラーモスの小川さん講演=水曜シネマ

2006年10月10日付け

 文協水曜シネマが四日の「兵隊やくざ」上映会で入場者数二万人を突破したことを記念し、特別企画としてサンタ・カタリーナ州ラーモス移住地在住の長崎県の被爆者、小川和己さん(77)の体験を基にしたドキュメンタリー映画「memorial da Paz(平和の記憶)」の上映会と平和講演会が行われた。
 同ドキュメンタリー映画は、地元大学生と教員によって昨年製作され、ミーナス州で開催された「第四回ヴァルジーニャ・シネマ・フェスティバル」のドキュメンタリー部門でグランプリに輝いた作品。映像や写真などを通じて広島と長崎の被爆の歴史を振り返るとともに、小川さんの反戦に対する思いを表した作品となっている。
 長崎県出身の小川さんは十六歳の時に被爆。戦後アメリカで農業の研修を積み、六四年、サンタ・カタリーナ州と海外移住事業団(現JICA)の協定で州直営の日伯混成移住地として創設されたラーモス移住地に入植した。現在はネクタリーナを始めリンゴ、梨、シイタケなどを州の特産物にするため尽力する一方、ラーモス原爆被害者の会会長を務め平和運動に力を入れている。
 同地では、移住地を一望できる高台に平和を意味する鶴のモニュメントや「さくら公園」、「平和の鐘公園」などが作られている。
 上映後の講演で小川さんは、原爆体験を振り返り、戦争の恐ろしさや平和の大切さを語り、「二度と原爆を使用しない。長崎を原爆による最後の被爆地にしたい」と訴えた。
 水を求めて亡くなっていった人。汚れた水を飲んでゆきながら亡くなっていった人を見てきた小川さんは、「美味しい、美しい水をあげましょう。豊かな心をもちましょう。豊かな心をもてば戦争は起こりません」との思いと共に、「幸せになる水」、「豊かな水」を多く含む梨の銘柄「幸水(こうすい)」と「豊水(ほうすい)」の栽培に取組んでいる。
 移住した国が「平和に対して耳を貸すことのできる純真な国、ブラジルでよかった」という小川さん。講演後は、「同ドキュメンタリー映画を製作した地元の大学生と教員の熱心さに感謝する」と話していた。