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身近なアマゾン(11)――真の理解のために=ペルー国境を行く=アマゾン支流最深部へ

2006年11月14日付け

 □ペルー国境の町で□
〔前編〕昼の採集編(1)
 仕事柄、日常いつも頭の中はグジャグジャで、アマゾンのどこに行けば誰も採ったことのない魚が採れるか、という雑念が抜けない生活をおくっている。
 それで暇があれば、ブラジルの地図なんかをなんとなく眺めていることが多く、ブラジルが隣国と国境を接している辺りを、眺めていた。
 ブラジルの西端にアクレ州という辺鄙な山奥の地方州があるのを知ってはいたが、その州のまた西の端の場所がなんとなく目に入った。こういう場所を最果ての地というのだろう。
 あと百キロメートルも行けばペルー国境という位置に、クルゼイロ・ド・スール(以下クルゼイロと略す)という町があるのを、思い出した。
 この地がブラジル領域内を流れるジュルア川というアマゾン支流の最上流部であることは知っていた。そんなことを思い出したら〔一丁 ここを訪ねてみてやろう〕という考えがムクムクと頭の中にわいてきた。
 以前、バリグ航空の〔イカロ〕という機内誌に、航路案内として、このクルゼイロの名前があったことを、頭のどこかで記憶していたのだ。
 ものは相談と、早速バリグ航空に電話して確かめたところ、〔火曜、木曜、土曜、週三便がその地を飛んでいる〕ことを確認した。アクレ州の州都リオ・ブランコという町まではバリグ航空の飛行機が、サンパウロから毎日一便飛んでいる事は知っていたが、そこからクルゼイロまでは、週三回の就航になるそうだ。
 マナウス~サンパウロ路線をアマゾン航空ラインの幹線とすると、サンパウロ~リオ・ブランコ路線はローカル線という位置になりますが、そうすると、このリオ・ブランコからクルゼイロの航路というのはローカルのまたローカル、かなりの辺境地ということになる。待つのも面倒なので、翌日早速出発した。
 搭乗したサンパウロ発、クィアバ(マット・グロッソ州州都)、ポルト・ベーリョ(ロンドニア州州都)、リオ・ブランコ(アクレ州州都)、クルゼイロ・ド・スール(今回の目的地)経由マナウス(アマゾナス州州都)行きの各駅停車の飛行機は、定刻九時にサンパウロを離陸、予定では当日の午後二時にクルゼイロ到着、とあるので〔五時間とはけっこう近いんだ〕と思って安心して乗っていた。
 飛行機は大して揺れることもなく、クルゼイロ空港には定刻午後三時に到着した。ところが、奇妙なことがあった。筆者の時計はすでに午後五時を示していたのだ。
 そこでは、太陽の位置を確認するまでもなく、また一日で一番明るい日中の二時頃の日差しに間違いない。奇妙に感じたので空港職員に尋ねてみた。
「すみません。サンパウロから来たのですが、今何時ですか?」
「二時ですよ」
「私の時計では五時なんですが」
「サンパウロとクルゼイロは時差が三時間あるよ」
「あー、そうだった」
 それを聞いて、思い出して、ようやく納得いったのだった。つづく (松栄孝)

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