◇コラム 樹海

 当たり前だが新聞は裁判官ではない。だが、いろいろな問題が持ち込まれる▼先月このコラムで、サンパウロ市郊外にある某日本企業関係者から届いた「地元日系団体の一部役員が不正行為を働いている」との投稿を紹介した。企業名、日系団体名を完全に匿名で扱ったが、当の日系団体代表らが「事実とは違う」と抗議に来社した▼その日本企業は十八年前に、社有地を地元日系団体に九十九年間の無料貸与する契約を交わし、地域の日系スポーツ界振興を支援してきた▼弊紙では投稿に関して「ことの真偽は明らかではないが」との但し書きをつけ、「三年前、その団体役員が施設の休遊時間に非日系人に有償で又貸しし着服していたことが発覚」、さらに「同団体役員らは、同市役所の日系幹部に頼み込んで免税書類を発行してもらったが、その書類が不正であることが最近表面化した」と企業側の言い分を紹介した▼この記述に関して、日系団体側は「九十九年間の契約だったのに、今の社長になってから急に返せといってきた」「ブラジル人のサッカー団体に貸して賃料を取ったのは事実だが、役員が着服したのではなく野球チームの運営費に使われている」「市からもらった免税許可は正式なもの」などと異議をとなえてきた▼土地の使用権を取り戻す裁判が、企業側からすでに起こされているという。次にこの件を書く場合は、匿名という訳にはいかないかもしれない。本来、日系団体と日本企業が仲違いするのは悲しい話だ。ぎりぎりのところまで話し合って解決するしたたかさ、根気強さを双方に期待したい。(深)

2006/11/15