ピラールで説明会=種無しぶどう普及へ=「高級果物」で売り出せる=日本種、栽培農家を増やしたい=JICA浦田シニアが指導

2006年12月19日付け

 サンパウロ柿生産者協会(森岡明会長、APPC)は十五日、ピラール・ド・スル市の日系ぶどう農家で、同地の会員を集めて、種無しぶどうの栽培説明会を開いた。提案者は今年七月から同地に派遣されている専門家、浦田昌寛JICAシニアボランティア。熊本果実県連の技術指導課長を務めた経験があり、ぶどうのほか柿やみかん栽培などの最新技術に詳しく、地元の農家からは〃先生〃と呼ばれるほど信頼があつい。同地への赴任は今回で二回目。
 種無しぶどうは日本ではすでに主流となっているが、ブラジルでの認知度はまだ低い。その点に着目した浦田さんは、高級果物として売り出すことができると提案。地元の農家が数年前から栽培をはじめた。
 会員らは浦田さんが日本から持ってきた「藤稔」や「紅伊豆」など、巨峰の系統をくむ品種を栽培する森岡会長や江坂雅雄さんらの四つの農家を訪問。栽培上の詳細な注意点を受けた会員らは熱心にメモをとっていた。
 種無しぶどうは一キロあたり五レアルほどで出荷ができるのが魅力。一般のぶどうが一キロで約、一・五レアルほどの卸値というから、栽培の利点は大きい。
 また日本のぶどうは実の皮離れがよく、糖度が高いことに加えて、耐菌性にも強い。そのため農薬散布が少なくすみ「体によく経費も削減できる」。
 とはいえ、ぶどうを種無しにするために必要な薬品であるジベレリンの品質が、ブラジルではまだ安定していない点や、収穫期を控えた十一月ごろに雨がよく降り、気温も高くなることから、実が割れやすく十分に色をつけなくなるといった栽培上の困難もある。
 この他にも「日本のブドウは色が黒くて比較的小ぶりなものが好まれるが、ブラジルでは色が白く大きくたくさん実をつけるブドウが好まれる」といった消費者の違いもあるため、これから生産する品種もブラジル人の嗜好や風土にあわせて研究を重ねる必要があるという。
 浦田さんは「ブラジルのマーケットにおいては種無しブドウはこれから。今後は消費者を集めての品評会なども開いて、積極的にアピールしていく必要がある」と話している。
 現在は、今月のナタールの出荷にあわせて生産のピークを迎えている。これらのぶどうは、パラナ州ロンドリーナ市やサンパウロ市などの富裕層向けに販売される。江坂さんのぶどうは、サンパウロ市リベルダーデ区にある丸海などでも購入できる。