コラム オーリャ!

2007年1月9日付け

 セアラ州都フォルタレーザからバスで三時間半、小さな猟師町ジェリコアコアラで日系三世に会った。「サンパウロに疲れたから」。三十代と思われるその女性は十年ほど前にサンパウロ市から移り住んだという。
 三年前まで電気が通ってなかった同地。砂丘に囲まれていて農業が難しく、代々漁業で生活を支えてきたが、ここ十年ほどの間に観光業が主要産業にとって変わった。観光地の一つとして、今、知名度を上げつつある。
 「若い人は魚の取り方を知らない」とこぼす五十代の元漁師と「ここが有名になったらいい」と笑顔を見せた青年が対照的な、のどかな町。
 「日系は一家族いるみたいだけど知らないな。もう混ざって(メスチソになって)るよ」とその彼女。百年間の歴史の分だけいろんな人がいるのだろう。「ここがいい」と話した顔は、満足そうに思われた。  (稲)