在日日系人の将来――外国人労働者問題協議会が提言(上)=定住者と出稼ぎ者の区別=まず明確化の必要性説く

2007年1月11日付け

 【東京支社】現在、在日外国人の登録者は二百余万人といわれる。注目されるのは、急増する中南米日系人。なかでも三十一万人を超す日系ブラジル人の存在である。
 日本は一九八〇年代後半、極度な単純(未熟練)労働力不足に見舞われ、中小企業は人手不足による倒産の危機に追い込まれた。その不足を補うアジア系不法就労者への取締りが強化されるなかで、頼りは合法就労が可能な日系人であった。さらにその枠を広げ、日系三世までの就労が可能な入管法改正が一九九〇年に行われた。
 その前年の一九八九年十二月、在中南米大使と中南米国会議員連盟との懇談で、当時の外務省中南米局長は、「将来の日本と中南米との架け橋となりうる日系人という観点から、もっと健全な受け入れ体制を考えるべきだ」と語った。
 だが、その思いが、企業、日本にどれだけあったか、と思うと、現状はさびしい限りであった。そのことは、日系人受け入れに、暗い影を落とす大きな要因ともなった。
 日常生活に大きな影響をもたらす福祉、教育面などを見ても明白である。企業による直接雇用はわずかで、請負・派遣会社による間接雇用が、その大半を占めた。
 だが公に、彼らと接する関係者から問題点や実態が、直接語られる機会は、ほとんどなかったといえよう。
 □外国人問題協議会
 そんな状況下で、請負や派遣に携わる企業や関連団体、また関心を抱くマスコミ関係者らにより二〇〇五年四月、「外国人労働者問題協議会」(事務局・神奈川県大和市上草柳四八二-二-二〇二、野口重雄事務局長)が組織された。
 顧問には、自らもブラジル移住の経験をもつ後藤博子参議院議員が就任した。自ら体験を通し、矛盾する問題点、直面する諸問題を持ち寄り、改善のための検討を重ねてきた。
 □日本企業と外国人労働者
 後藤議員は、「日本は、少子化による労働力不足は明白であり、深刻であることを、はっきりと受け止めなければならない」と語る。
 同議員は、日本政府は、男女共同参画社会化の実現のための女性労働者に関する施策やニート、フリーター対策などを立案してはいるが、現在の生産現場では、外国人労働者が不可欠であることを直視することが、重要である、と指摘。会員の一人は「零細企業の定期社員採用で、日本人が入社してくることは、無いに等しい。あったとしても高齢者ばかりである。外国人労働者がいなければ、仕事が出来ない状況であることを痛感する」と語り、「もし、日系人労働者がいなければ、工場閉鎖か、海外移転以外、方法はないのです」と、その現況を語る。
 □定住者と出稼ぎ者
 同協議会は、外国人労働者が抱える問題の解決には、「定住者」と「出稼ぎ就労者」との明確化の必要性を説く。
 まず、①資格審査、②人材条件、③諸制度、④子弟教育、⑤研修制度の項目に分け、具体的な提案している。
 「資格審査」においては、定住者については、ビザ発給時において、定住希望者には、日本人と同等の義務が生じることを明確に伝えるとする。出稼ぎ就労者には、ビザ発給時に、極力期限付き短期就労を勧め、定職がない、日本語能力がない者には在留延長を認めない、とする。
 「諸制度」については、高度技術者には、税制面で優遇し、社会保険制度などの加入は義務付けし、定住意識を高める。
 出稼ぎ就労者については、日本の税制、社会保険制度などを短期出稼ぎ就労者にあてはめず、現状に見合った税制、保険の任意加入制度等を構築する。
 「子弟教育」は、定住者の子弟への義務教育化を強化し、また教育する受けやすい場を増設する。
 一方、期限つき出稼ぎ就労者に対しては、義務教育課程の子弟の入国を制限する、と同時に単身ビザを勧めるなどの提言を固めているなど、提案する。つづく