■記者の眼■――――祭典本番に6億円?!=百年祭幻想を捨てよ

2007年1月11日付け

 今年はなんといっても、移民百周年に向けた準備と調整の年だろう。なかでもこの一月は重要だ。夢のような予算額の事業を削減し、地に足の着いた百年祭にする転機だからだ。
 誰もが不可能だと思うような計画を目玉にしたり、「どうやってそんな金を集めるのだ」という疑問がわく大金を口にするから、百年祭全体が眉唾だと思われてしまう。この際、きっちりと練り直すべきだ。
 例えば、百年祭本番に六億円もかかるの?──とは誰もが不思議に思う数字ではないだろうか。でも、祭典費用には五百六十万ドル(約六億一千万円)が計上されている。
 なぜそんなに必要か。サンパウロ市会場のサンボードロモは、市役所サイトによれば三万人入るが、当日祭典には四万五千人から五万人が来場する予想なので、倍近い仮設席を作る。その費用が莫大だと聞く。
 それじゃ、本末転倒だ。五万人を当日集めるなら、最初から五万人収容の施設を使うべきだ。安全性を考えたら、なおさらそうだろう。式典の中身に投資するならまだしも、仮設席に大金をかけるのは、いかがなものか。
 移民パレードをしたいからサンボードロモというのなら、入場を三万人に抑えるしかない。五万人なら、パカエンブー蹴球場にし、そこでできるパレードにするのが順当だ。
 箱モノの構想額を憶えているだろうか。日伯総合センターで約四十六億円、アラサツーバ文化センターで約六億五千万円、アルモニア日伯学園で約十一億円、そのほかサンタクルス病院増築計画もある。
 正直いって、ため息がもれる金額だ。
 百周年記念誌、映像記録、人材交流、各種シンポジウムなどそれ以外の記念事業だけで十八億円、諸経費一億二千万円だった。
 憶えているだろうか。移民八十周年で日伯友好病院を作ったとき、援協役員は四年がかりで必死に取り組んで総額十五億円を集めた。コロニアで七億円、日本から八億円だった。日本の金額のうち、日本政府は三億円程度で残りは民間団体や知事会だったと聞く。
 当時の援協役員は、個人で一千万円程度の寄付を進んでするものが何人もいた。役員だけで八千万円程度をあつめ、それを呼び水にして一般コロニアや企業に呼びかけ、四年がかりでようやくそれを十倍にした。
 その心意気に賛同し、病院建設の趣旨に共感した市井の一移民が、十四キロもの金塊や、貧者の一灯ともいえるなけなしの金を続々と寄付した。
 百周年では、そのコロニアで集めた浄財に匹敵する六億円ものお金を、後に形を残さないフェスタで使おうとしている。
 祭典企画者は、まず自分自身がどれだけ出せるかを考えるべきだ。「財務委員会が集めてくれる」という人任せで、資金が独りでに飛び込んでくると本気で思っているのか。
 現実をみて、もっと実のある記念事業に資金を集中し、フェスタは慎ましやかにすませてもいいのではないか。
 百年祭関連事業の見直しをする今月は、よき〇八年を迎えるための正念場だ。今こそ「百年祭だからなんとかなるはず」という〃幻想〃は捨て、地に足をつけよう。  (深)