在日日系人の将来=外国人労働者問題協議会が提言(下)=外国人はモノでない=「日系人に在留資格乱発し過ぎた」

2007年1月12日付け

 【東京支社】二〇〇五年四月に発足した外国人問題協議会は、定期的に会合を持ち、外国人労働者が直面する問題の現実的な解決について討議を重ねてきた。日本でも「外国人労働者問題」については、これまでも様々なフォーラムが開かれ、数々の記事や論文が発表されてきた。
 雑誌『ウエッジ』(二〇〇六年十一月号)で、小野五郎教授(埼玉大学)は「社会にツケを回す外国人労働者受け入れを放置するな」の中で、日本人は数多くの在日外国人の存在にもっと目を向け、身近な者が助け合うという互助の精神が国民一人ひとりに求められている、と語る。
 雑誌『東洋経済』(二〇〇六年九月号)で、小島祥美助教授(愛知淑徳大学)の岐阜県可児市の調査結果について触れている。住民登録する在日ブラジルの不就学率は約一割、これは日本人の不就学率の百倍と指摘されている。同市の住民未登録居住の児童の不就学は実に八割に達していることから推定すると、実にブラジル人児童の二~三割が不就学の可能性があると指摘する。
 不就学児童は一日中、家の中で、テレビを見ているか、町のなかをうろつくしかない。残された将来は非行に走るか、親と同じ請負会社にはいるしかないではないか、と問いかけている。
 同誌の取材に、外国人労働者問題協議会の野口重雄事務局長は、「ブラジル人が日本で幸せに生活できる土台ができていないのに、国は血縁関係だけで日系人に在留資格を乱発し、永住権の大盤振る舞いをしすぎた。それが問題の根本だ」と述べている。同誌は、「外国人はモノではなく、人だ」と語り「企業はいったい何を考えているのだろうか」と問いかける。
 □第一回、懇談会を開く
 直接、外国人問題に関わっている「外国人労働者問題協議会」の会員は、直面する問題の検討を重ねてきた。
 (〇六年)十一月十四日午後 一時半から約一時間半にわたり、同協議会顧問後藤博子参議院議員、長谷川憲正参議院議員の同席のもとで同協議会と各省庁(内閣官房、内閣府、検察庁、総務省、法務省、外務省、文部科学省、労働省、経済産業省)と第一回懇談会を参議院議員会館会議室において開いた。
 野口重雄事務局長をはじめ参加会員と各省庁担当者とで、率直な意見が交わされた。内閣参事官からは、中間整理の段階であり、考えの違いもあるが視点は似ていること、厚生労働省担当者は改正労働法、社会保険と年金問題のことについて説明がなされた。
 同懇談会において、外国人労働者が抱えている大きな問題の一つを上げると、子弟の将来を左右する学校教育問題が浮上する。各種学校として都道府県が認可している外国人学校については、地方自治体が各判断にもとづいて助成を行っているが、いまだにブラジル人学校において、各種学校として認可されていないこと、外国人児童生徒には就学義務がないこと、就学希望者については無償受入れを行っているが、現実には不就学や日本語教育に問題がある、と行政は指定している。
 ブラジル人学校はなんら公的援助もないため授業料も高く、就学を困難にしているという事実。多くの公立小中学校は、外国人就学を想定しておらず、日本語習得の障害が大きいことなど、問題点が明白になっている。
 この問題について省庁側は、日本語教育事業として、①日系人等を活用した日本語教室②退職教員や日本語能力を有する外国人を対象とした日本語指導者養成③外国人に対する実践的な日本語教育の研究開発をあげている。また各種学校設置認可基準緩和について都道府県等にさらなる周知をはかることなどをあげた。