神戸市=3年で約6億円かけ改修=旧移住センター保存決まる=伯関係者も喜びの声

2007年2月17日付け

 多くの移住者が最後の日々を過ごした思い出深い旧神戸移住センター(国立神戸移民収容所)を保存・改修することを、国や県の補助金を得て神戸市が行うことになった。今年から構造検査などを始め、〇八年中頃から改修工事を着工、〇九年度中の完成を目指す。
 一九二八年に建てられた同センター。戦争の影響で四一年に閉鎖したが、五二年に神戸移住斡旋所として再開。六四年、神戸移住センターへと改称を経て、七一年の移住事業終了までに、南米各国などへ向けて旅立った移民の相当部分を送り出した歴史的施設だ。
 建物は阪神・淡路大震災に耐えたが、老朽化が進み、九九年から日系コロニア四団体が保存を訴える署名活動を行った。国内在住の日系人も含め、これまでに四千八百人分が神戸市に提出されている。
 市は、県や日伯協会とともに「国立海外日系人会館」としての整備を国に求めてきた。しかし、〇二年、横浜にJICAの海外移住資料館が開館した事もあり実現のめどが立っていなかった。
 毎日新聞によれば、同センターの保存に見込まれる費用は総額六億二千万円。市が国土交通省に申請した「まちづくり交付金」事業費の四割にあたる一億五千万円を国の補助金からまかない、県からの補助で一億一千万円。神戸市は総額で三億六千万円を負担する。
 現在センターは暫定的に芸術家のアトリエとして使用されるほか、毎年四月には関西ブラジル人コミュニティ(CBK、松原マリナ代表)が「移民祭」などの文化交流イベントを実施している。
 保存運動を手がけてきた日伯協会の西村正理事長は神戸新聞の取材に対し、「センターは歴史の証人。移住の歴史と先人の苦労を伝え、国際交流拠点としても生かしてほしい」と語った。松原代表も「日系人に誇りをもたらし、ルーツを確認できる場所」と話し、日本人と在日ブラジル人との交流の場としての役割強化に期待を込めた。
 同センター保存の署名活動を進めてきた網野弥太郎さん(元県連会長)は「思い出のある建物、第二の家ですから、何らかの形で海外とのつながりを続けてほしい」と保存決定に喜びの声を挙げる。
 再開後は、海外移住の歴史の紹介、在住外国人の支援や芸術交流活動の拠点とし生まれ変わり、資料も充実させ、日系人向けの日本語教室や交流事業を行う場として活用される方針だが、具体案はこれからだ。
 日本国内で最も移民に縁の深い場所であるだけに、百周年記念イベントの舞台の一つに相応しいとの声もある。次に百年間の日伯交流に役立つようなプランを期待したいところだ。
 網野さんは「まずは保存が決定されたというのは意義のあること」と声を高め、「ただ古いものを飾るだけでなく、将来に役立つ建物として活用してほしい」との想いを語った。