地域の信頼を得る=サンパウロ州のモデル交番=ジョルジ軍曹、多忙な1日=「住民と密着した仕事を」

2007年5月12日付け

 【既報関連】日本の〃おまわりさん〃を目指して――。「安全な国・日本」の治安を根幹で支えている交番制度を取り入れようと、サンパウロ州でJICAが進めている交番プロジェクト。このほど、日本の専門家が巡回指導を行うモデル交番が、八カ所から二十カ所に拡大された(八日付け既報)が、実際にはどれほどの成果をあげているのだろうか。ブラジルに日本の交番制度は定着するだろうか。訪日研修を受け、現在、モデル交番のひとつ、ロータリー広場交番(ビラ・ブアルケ地区)で所長を務める、ウィルソン・ジョルジ・D・サントス軍曹を訪ねた。
 ジョルジ軍曹の一日は忙しい。交番は町の公園の一角に設置されているが、交通取締りや地域の巡回、電話に対応し、訪問者の質問に答え、問題があれば対処に出かけるなど、業務の幅が広い。
 先月(四月)の交番への訪問は四百四十七件、交通違反の罰金が三百九十四件。違反者が他の犯罪者だったこともあるという。
 「交番ってのは、警官が休憩するところだと思ってた。何もせずに泥棒が来るのを待っているような」。ジョルジ軍曹はモデル交番で務める前の印象をそう語った。
 昨年の八月に日本での研修を受け、「ブラジルの警察の行動を変えたい」と決意。交番新聞も継続的に発行して情報発信に務めるとともに、公園で遊ぶ子供たちをまとめてサッカーチームを作り、定期的な大会を警官の立会いで行う。子供同士のいさかいを減らすとともに、地域の人々の交流に繋がる活動だ。
 「穴があったり、電灯がつかないといわれたら、市役所に連絡するし、犬探しなんかも新聞に載せるようにしてる」。
 昼食を取る時間がないというジョルジ軍曹は「忙しいけどこの仕事は好きだ」。「まずここ(地域)にいる人々を大切にして、コミュニティーや学校でも交番の役割をアピールしていきたい」。
 交番の活動は、〃捕まえに行く〃というブラジル警察のイメージに比べて活動は地味だが、着実だ。JICA専門家として滞伯している石井孝専門家(神奈川県警警視)は「住民の情報を集め、犯罪の予防に努めるには、信頼が必要」と、交番の原理を説明する。
 石井さんは「日本の交番サービスは全国で同じ。この一年半で基礎ができたので、これからは、質のいいサービスを均一に広げていく段階」。交番プロジェクトが開始された一昨年からこれまでに五十人以上のブラジル人警官が日本での研修を受け、「交番活動とは何か」を学んだ。各モデル交番は、独自に地域との交流イベントを計画、実施し、地域に密着した活動を展開している。
 ジョルジ軍曹は「もう少し人数が欲しい(州内モデル交番の一カ所あたりの軍警数は三~四人。その人員で四交代。したがって総計はおよそ二百六十人)」と改善点を訴えながら、「日本の警察官は、消防士のようにヒーローのイメージ。最近は、ここでも住民がお菓子を持ってきたくれたり、誉め言葉をもらうことも増えた」とうれしそうな笑顔を見せ、週末も地域の行事に参加すると、意気込んでいた。