コラム 樹海

2007年5月15日付け

 「娘3人持てば身上つぶれ」「嫁を貰うなら名古屋から」と―尾張の嫁入りは豪華絢爛さを誇る。トラックを動員し嫁入り道具を満載し隣人や知人に披露するのが昔からの習慣だそうだが、兎にも角にも豪勢さを競うのが名古屋人の自慢なのである。尤も、使いっ放しでは決してない。貯蓄額は高く、1世帯当たり1688万円と全国で一番なのだ▼この地の人々は、貯めるときには、せっせと蓄え使うときには派手に散じるというしぶとくも逞しい心が根強い。これは経営にも生かされ「トヨタ」を世界の一流に押し上げた。営業利益2兆円超の企業は日本で初めてのことだし、来年の売上高は25兆円を突破し、最大手のゼネラル・モ―タ―ズ(MG)を追い越す勢いだ▼だが―この栄冠も決してなま易しいものではなかった。中興の祖であり大番頭と呼ばれ第3代社長を務めた故石田退三氏の存在を忘れてはいけない。田舎者精神を標榜し「設備投資第一」「ガメツサ徹底」「合理的な金儲け」の3主義をモット―にし、小さかった「トヨタ」を育て今日の大企業にした功績はもっと語られていい。借金の無い経営を語り、全国の青少年に大いなる夢を与えたのも大きい▼経団連の会長だった奥田碩氏も入社したときは確か―石田社長の秘書であり、多くを学んだに違いない。大番頭が築いた基礎を固め國際的なトップにしたのが奥田氏や張富士夫会長と渡辺捷昭社長である。生産台数が多いだけではなく、性能も良く技術的な水準も高い。そして世界一の自動車メ―カ―も目の前にある。辛苦の中から生まれ育ったこの喜びを日本は大いに誇りたい。  (遯)