〃ごみゼロ〃のサンパウロ市めざす=大阪市をモデルに=JICAプロジェクト=家庭での分別から始める=Mボイ・ミリンなどで

2007年5月26日付け

 大阪市をモデルに、サンパウロで〃ごみゼロ〃を進めよう――。JICAが進めている、固形廃棄物を中心とした環境教育・社会啓発プロジェクト「MENOS LIXO、MAIS VIDA(ごみを少なくし、やさしい生活)」の、第一回社会啓発セミナーが、二十三日、バネスパ・スポーツ・クラブで開催された。対象地域人口四十七万人、対象生徒数一万七千人の同プロジェクトは、サンパウロ市と姉妹都市提携をしている大阪市の協力を得て、サンパウロ市エメボイ・ミリン区とカペラ・ド・ソコーロ区で「家庭ごみの3R(削減、再利用、再資源化)」を進めようというもの。教員や行政区関係者など、約百三十人が参加し、日本からの専門家三人を招いて、サンパウロ市のごみ回収の現状やプロジェクトの概要が説明された。
 サンパウロ市で一日に排出されるごみの量は、約一万六千トン。そのうち、分別されているものは、一%にも満たない〇・五六%のみだ。同市では、ごみの回収に三千八百人が、清掃に九千五百人が働いており、年間九億レアルがその事業に費やされているという。これまで使用されてきた六カ所の埋立地は全ていっぱいになり、現在は他の三カ所が稼動している状況だ。
 ごみの取り扱いを担当しているサンパウロ市サービス局のディマス・ラマーリョ局長は、開会あいさつで「ごみを道に捨てることについて、誰も意識していない。ごみについて、どう減らし、どう教育していくか。環境教育を扱うこのプロジェクトは、まさに基礎にあたる」とその意義を称えた。
 プロジェクトを中心となって実施するのは、区に設けられた都市清掃部(略して、LIMPURB)。
 対象となる十二万八千世帯にパンフレットを配布し、家庭ごみの分別を呼びかける。カタドールらの収集品が集まる分別センターでまとめ、ごみの資源化を行う。また、地域にある三十四校の学校で環境についての講義を行い、教師用教材も作成する予定だ。
 JICA専門家としてプロジェクトを担当している後藤孝志さんは「サンパウロのごみ処理は進んでいるほう」。ごみの回収をきちんとできない国があることを例にあげつつ、「ブラジルは次の段階(3R)に進まなくてはいけない。すぐに結果がでるものではないが、分別はこういうものだと住民が知り、そのシステムを動かせる人材をつくることができればいい」。
 今年一月末から八人の行政関係者が訪日し、一カ月間、大阪市のごみ回収、資源化システムを学んだ。現在、日本から三人の専門家が来伯して対象地域の現状に対して助言。七月には再び、別の関係者八人が日本へ向かう。後藤さんは「プロジェクト終了後も、サンパウロ市と大阪市が互いに協力して続けていってもらいたい」と期待を語った。
 セミナーでは、大阪市環境事業局の三原眞係長が同市での社会啓発の取り組みについて紹介。四百万人の人口を抱える大阪市では七百億円(一般予算の四%)をかけ、ごみ処理や啓発活動に努めているという。
 高柳建二専門家も、日本の教育課程では、地理や家庭科、社会、理科など様々な教科で環境教育がなされていることを説明し、来場者らは熱心に聞き入っていた。
 カタドールらが集うコーポラチーバ・ユニオンのペドロ・ゴメス・ダ・シルバ会長は「日本の経験を持ってきてくれるのだからプロジェクトは興味深い。よく知るために参加した」と笑顔で話していた。