■記者の眼■―――〝お寒い〟百周年協会会見=低調な伯メディアの関心

2007年5月26日付け

 ブラジル日本移民百周年記念協会(上原幸啓理事長)が二十五日午前、日伯メディア向けに記者会見を開いた。
 〇四年三月に伯メディア約二十社を集めて行なわれた記念ロゴマークの発表会以来の大々的な会見となる予定だったが、何と日系メディアを除くと、会見に臨んだのは、二社のみ。
 遠山景孝・広報担当によれば、約三十社に連絡をしたという。
 ほぼ全社が揃った日系メディアには目もくれず、上原理事長、エスタードの記者の出席に満足の様子。会場に拍手を求め、もう一人の女性記者を「彼女の子供は私の教え子なんですよ」と何とも嬉しそうに会見は始まった。
 そもそもこの会見、先月四月に百周年の免税口座団体(OSCIP)「文化社会統合機関」が連邦法務省より認可されたことを受けたもの。今月十日に予定されていたが、何の理由か二週間後となった。
 中矢レナット・財務委員長は百周年関連事業に一千七百万レアル(約九億円)が必要とし、イタウー、ブラデスコ、ブラジル、スダメリス、カイシャ・エコノミコ五銀行の口座番号の掲載を依頼するという、かなり〃直接的〃な広報活動を会見の場で行った。
 伯メディアが来なかった理由は色々考えられる。日本移民百周年自体に関心がない、時期尚早、読者の興味を惹くプロジェクトの不足、等々。そして、根回しの悪さが指摘されても仕方がない。
 今回のように大きく発表する意思を持って行う会見であるならば、ニュースを提示することもさることながら、綿密な連絡も必要だろう。実際、今回出席した記者の一人には前日に連絡があったという。
 振り返れば、前出のロゴマークもあれだけ大きく報道したにも関わらず、百周年の広報を担当する大手広告代理店DPZの意向で昨年、いとも簡単に現在のロゴマークに変更されてしまったことは周知の通りだ。このことは内々に処理されていたため、広報どころか臨時総会で事後承諾されたのみ。
 こういう経緯を考えると、協会の記者会見に対する姿勢に問題ありとされても仕方がないだろう。
 さて、百周年協会が発行している機関誌「Centenario」の表紙にも大きく掲載されているのは、サンパウロ州政府教育局が実施する日本文化教育プログラム「Viva Japao」。
 上原理事長は、今回の会見でも同プログラムについて力説していたが、こういう「他人の褌で相撲を取る」広報はやめた方がいいだろう。もっと協会主導のプロジェクトを推すべきだ。
 吉岡黎明・文化委員長はイベントのコーディネーターにも就任しているようだが、〇三年に立ち上がった協会の歴史から、日本側からのキャンセル、活動停止状態、実現不可能に近いプロジェクトなども含め延々と説明。途中で司会のラジオ・ニッケイの宮城パウロ氏に時間の関係で遮られていた。
 記者会見をするのなら、少なくともそういう調整も必要だ。
 隣にいた松尾治氏が執行委員長に就任するとき、総務委員長だった吉岡氏をはずすことが大きな条件とされていたはずだが、なぜか松尾氏は押し黙っている。 救済会、文化教育連帯協会の会長も務める吉岡氏が会見のイニシアチブを取り続けていることが、図らずも協会の体質を象徴しているようだ。
 ともあれ、資金調達はプロジェクト実施の最大の要。OSCIPという受け皿は出来た。さらに門戸を広げるための広報活動を疎かにしてはならない、と切に思う。     (剛)