コラム 樹海

2007年6月5日付け

 反米の王者。ブッシュ大統領を罵り、カストロ議長を崇め奉る。ボリビアのモラレス大統領と手を結び革新国家?を叫び、国際的な「連帯」を呼びかける強権主義者。ベネズエラのチャベス大統領は、そんな印象を与える人物である。元陸軍中佐であり生粋の軍人ながら共産主義的な理論にも詳しい。貧者救済というお得意の政策で選挙でも抜群の強さを誇る「国民の星」でもある▼豊富な石油資源を背景に外交も強硬姿勢が目立ち、国連での演説でもアメリカをこき下ろし、世界の国々をびっくり仰天させる。こんなチャベスさんなのでTV局の閉鎖や「報道の自由」をひねり潰すのにも、何の頓着もない。民放局RCテレビは、53年の歴史を持ちベネズエラ最大のテレビ局で人気も高い。だが―チャベス政権には、真に都合が悪いTVなのである。政府批判の報道が多く、ここがまた視聴者に歓迎されるのだがー▼旧ソ連もだし、共産国家の欠点の第一は「言論の自由」がないことだった。今の中国もしかりであり、言論統制は厳しい。露のプ―チン大統領も新聞やTVの取り締まりを強化しゴルバチョフ氏らが推し進めた民主化への動きはぺちゃんこになっている。だが、こうした報道と言論の統制は危険極まりない▼勿論、ベネズエラの学生や市民も黙ってはいない。首都カラカスなどで抗議デモが多発し警官隊との衝突も起きている。催涙ガスが飛び交い投石も目立ち逮捕される者も大勢いる。しかし、チャベス政権の専制国家ぶりを露呈したこの事件への国際的な非難も多く、一連の騒乱の影響はこれからも続くのではあるまいか。   (遯)