拓魂=県連・ふるさと巡り=汎ソロの移民史名所を訪ねて=連載《7》=コロニア・ピニャール=立派な日本語図書館が誇り=「息子が農業継ぐ家ばかり」

2007年6月12日付け

 ソロカバのホテルに一泊したふるさと巡り一行は最終日の五月十九日午前八時過ぎ、六十キロ先の聖南西のコロニア・ピニャールへ向かった。
 折からの豪雨にたたられ、コロニア・ピニャール文化体育協会では会館によらずに青年図書館へ。徳久俊行会長(53、福岡県)によれば、同地は地理的にはサンミゲール・アルカンジョ市の一区だが、今でも移住地(三百六十アルケール)内の土地は全て日本人が所有しているという形態を保っている。
 「ここは息子さんがあとを継いで農業をやっている家ばかり」と徳久会長は特徴を説明する。「もともとは観光で来た」という変わり種の同会長は東京農大卒で七八年から在住、来年で三十年目になる。
 日系は五十六家族で、うち四十八家族が会員になっている。「福井村」と言われる同地には福井県人が十家族いるという。
 『聖南西文化体育連合会の半世紀』によれば、最初の入植は六二年の福井県人三家族、翌六三年に文協が創立された。
 現在の主な作物は富有柿、祇園坊柿、ビワ、ブドウ、梨など。ブドウ祭りを毎年二月にサンミゲルと一緒に行うほか、十月の日本祭り(盆踊り)、新年会、運動会などが主な行事だ。
 元会長の西川修治さん(59、福井県出身)は、「来年は移民百周年と入植四十五周年を記念して、(移住地の)入り口のところに公園を作りたい」という。広さは五十メートル四方ていどで、市の協力により公園にすること自体は決定済みだが、詳細を詰めている段階。リベルダーデにあるような大鳥居を設置したい、との希望をもつ。「来年六月にイナウグラソンしたい」。
 同地の誇りは、日本語モデル校と日本語図書館だ。
 東京在住の天野鉄人さんの全面的な協力で八二年に建設されたこの青年図書館(越智勝治館長)。館長によれば所蔵する日本語図書は七万五千冊、ビデオは二千本でコロニア屈指の規模を誇る。宿泊施設も付随しており、すでにボーイスカウト、聖南西の日本語生徒らの林間学校、モジの大学生などが泊まり込みで合宿に使っている。
 屋根を支える太い梁を指さしながら、越智館長は「当時、アマゾンから特注の太いイッぺー材を買ってきたので、今もクッピン(シロアリ)が寄りつかない。今じゃこんな木材は手に入らない」という。
 寄宿舎を二倍に拡張する工事を現在進めており、やはり来年オープンを目指している。建設資金二十万レアルの全額は、天野さん負担。現在でも雑魚寝なら百人は泊まれるという。西川前会長も「我々は天野さんに恩義があるから協力している」と公言する。
 西川さんは「南伯雇用青年」という珍しい制度で移住してきた。南伯農産組合中央会が福井県などと企画した移住制度で、一九六四年から五年ほどの間に、同県から八人が入り、五人が土地に入植した。西川さんはその第一陣だったという。
 コチア青年がなくなったあと行われた制度で、伯当初は南伯の組合員の農場に二~三年契約で入り、パトロンの後押しで独立するというほぼ同様の仕組みをとった。西川さんのように福井県出身者は、同コロニアに入植するのに土地代が免除されるなどの特典があったという。
 図書館内で一行は、同地婦人部が作ってくれたボーロやサウガードを賞味し、興味深く話を聞いた。雨の中、急ぎ足でバスに戻り、次の目的地ピラール・ド・スルへ向かった。 (深沢正雪記者、つづく)

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