コラム 樹海

2007年6月26日付け

 政界には奇怪千万なところがある。所謂―世の常識を超えるような議論や行動が飛び出し、正々堂々と天下を歩む。国民新党(綿貫民輔代表)が、元ペル―大統領だったフジモリ氏に7月の参院選挙に出馬を要請したのニュースには驚き、その奇想天外さにびっくり仰天した。尤も、仕掛け人は亀井静香代表代行であり、秘書をサンチャゴに派遣し「何卒―ご出馬を」と説得にこれ努めているそうだけれども、どうも筋が通らないような気がする▼フジモリ氏は移民である熊本県出身の母親がペル―で生んだのだからペル―人だが、あの頃の習慣で日本の国籍も取得している。従って、法律的には国会議員にもなれるし、選挙に立候補し弁舌さわやかに政策を訴えることもできる。しかも、元大統領であり、今もペル―への帰国を切望し闘いを続け知名度は抜群である。もし、亀井氏の薦めに同意し出馬すれば、当選確実は間違いない▼だが、フジモリ氏は慎重な態度を崩していないらしい。フジモリ派の重鎮チャベス元国会議長は「参院選出馬はペル―での政治的な死を意味する」と戸惑い、実弟の国会議員は「受け入れないように説得する」と反対だの記事を時事は報道する。亀井氏の奇奇怪怪な狙いは解るつもりではあるけれでも、まあ―これは「永田町の遊戯」?▼確かにフジモリ氏はおもしろい。今は自宅軟禁でチリの裁判所もペル―へ身柄引き渡すの観測が濃い。しかし、あの日本大使公邸の地下救出作戦や大統領選挙ではトラクタ―での遊説は光り輝く。と、この尊くも重い想い出を大切にし、フジモリ氏を静かに見守りたい。 (遯)