「ジュニアのレベルは日本に負けない」=サンパウロ市=卓球指導続ける武田さん=「日本と渡り合える選手を」

2007年7月5日付け

 ブラジルで卓球の指導を続ける日本人がいる。サウーデ区にあるイタイン・ケイコウクラブ(Rua Paracatu、490)で教える武田俊夫さん(38、神奈川県)。同クラブは世界ジュニア選手権の出場者も出ている有力クラブだ。全日本の選手のトレーナーなどもつとめた経歴をもつ武田さん。自分の好きなことで仕事をしたいと、〃卓球と子供〃の両方に着目。五度目の来伯となる今回は、さらに腰を落ち着けて取り組むつもりだ。「自分に嘘をつかなくて良い」と子供たちの純粋な心に助けられることも多いとか。これからもブラジル内でこの仕事を続けていくと心に決めている。
 きっかけは、卓球用品を扱うButterfly社ブラジル代理店社長の山田マルコスさんと日本で出会ったこと。一九九六年に旅行で訪れて以来ブラジルへの関心が高まったという。以前、パラナ州で卓球の指導をした経験を生かし、自分の得意分野の卓球に着目。「子供が好きで、子供と接することができる仕事をしたい」との考えから昨年十一月に来伯、イタイン・ケイコウクラブで教えている。
 同クラブの創設者は高橋みなこさん、山田社長、イタインケイコウ社阿部社長の三人が共同出資で運営。阿部社長がクラブハウスの家賃を子供たちのためにと個人負担している。現在の会員は約三百人。子供から大人まで幅広い年齢層がいる。
 創立二十年ほどだが、十六年間連続でブラジル内の最高クラブの称号を得ている。
 会員の中で、八~一八歳ぐらいまでの約三十人のエリートクラスの選手が、平日の午後三時頃から午後六時まで日々練習に励んでいる。武田さん以外にもコーチが二人いて、通常の練習には武田さんと二人で指導にあたっている。
 それ以外の会員は夜の空いている時間や週末の時間を使って練習している。
 エリートクラスに入るのは本人の頑張りと、将来に可能性があると思われる選手。武田さん、山田さんと二人のコーチの四人で決めるという。
 武田さんは小さい頃から、〃卓球さえできていれば納得する〃というぐらいの卓球好き。選手としては大会では勝つことはほとんどできなかったというが、全日本選手の専属トレーナーコーチや愛知県立桜丘高校の監督をつとめるなど、指導者として実績を積んできた。
 その他にもButterfly社の雑誌「卓球レポート」の編集にも携わり、日本内外でトップ選手等の取材も多くしたという。
 同クラブからはジュニア世界選手権に出場するような選手がいる。エリック・アラウージョ・マンシヌ(18)さんは二〇〇〇年から本格的に始めたばかりだが、すでにブラジルジュニア選手権で四度の優勝を飾っており、ラテンアメリカジュニア大会に二度出場し、一度優勝している。「将来はトップ選手として卓球を続けていきたい」と夢を話してくれた。
 その他にもブラジル選手権幼年の部で優勝している選手もいる。
 ブラジル卓球のレベルについて武田さんは、「ジュニアの部では、日本の選手に負けるとも劣らない」と評価。一方で、「将来有望な選手でも二十歳前後で、大学受験等で止めてしまうので非常に残念」と複雑そうな表情も見せる。
 「子供たちは自分のうつし鏡。こっちが真剣にやればそれに応えてくれるが、適当にやれば適当にしか返ってこない」と話す武田さん。「これからもブラジル内で卓球の指導を続けていきたい。将来は日本とも互角に渡り合える選手の育成をしたい」と今後の抱負を語ってくれた。