コラム 樹海

2007年7月26日付け

 日系人と日本の関係はどうあるべきか。移住事業はもともと国策として実施されてきたのに、その延長であるはずの海外日系社会に対する日本の施策が今もって明かでない。その部分が欠けているために、さらなる延長である日本国内のデカセギ問題にも確固とした方向性が示せない▼先日サンパウロ市で行われた海外日系人協会の運営会議でもデカセギ問題に関して、日本国内では単なる外国人労働者という観点からの意識が主体であり、移住者・日系人支援の側からの問題意識は薄い、との指摘もあった▼移住が一貫した筋道であるとの認識が、もっと日本側で持たれるべきだ。日本政府が「日系人は日本の宝」という発言をするのは、移住者にとっては心地よいことだが、実態を伴わなければただのリップサービスにすぎない。まさか、水戸黄門の印籠よろしく、それを振りかざせば日系人が満足すると思っているわけではあるまい▼ペルーの藤森大統領がそうであったような、たかだか百年足らずの歴史で移住先国の根幹に関わるような力を持つことは稀だ。しかし、将来的にはそのような人材や組織が育つ可能性も否定できない。それも、日本が日系人との将来的な関係をどのように考えているかに大きく影響を受ける▼日本政府が本当に「宝」だと考え、デカセギ問題に真剣に対処したいなら、まずは日系人という存在を広く日本国民に認知させるべきだろう。付き合いを始めるには、まずは相手を正しく認識することだ。その一つは、義務教育の学校教科書に近代日本史の一部として移民史を掲載することではないか。(深)