コラム オーリャ!

2007年7月27日付け

 サンパウロ人文科学研究所の鈴木正威理事が六年かけた労作、「鈴木悌一」を興味深く読んだ。
 ブラジル日系人実態調査、USP日本文化研究所設立などの業績のほかに資産凍結解除運動があるが、悌一の動きがやたらと格好良いのである。
 日本移民の知識が乏しかったノルデステ出身議員が多く泊まっていたというリオの超一流ホテルを定宿とし、エレベーターボーイから情報を得て、ロビー活動――。
 白洲次郎の「占領を背負った男」ではないが、戦後コロニアの財産を背負った男ぶりに、大した日本人がいたもんだ、と痛快な思いさえした。
 自分の不勉強はさておき、こういう日本人がブラジル日系社会にいたことはもっと知られていいし、顕彰すべきだ。
 しかし、百周年を前に歴史を残す事業が個人的情熱に大きく拠る状況にため息が出るのもまた事実なのだが。  (剛)