《国外犯処罰》浜松店主強殺事件=日本で初の証人尋問=「被告人はうそばかり」

2007年7月28日付け

 【静岡新聞】平成17年11月に浜松市で起きたレストラン経営者強盗殺人事件で、現在公判が行われているブラジル・ミナスジェライス州裁判所が日本に要請していた証人尋問が27日、静岡地裁(引馬満理子裁判官)で開かれた。被害者の三上要さん=当時(57)=の妻利江子さん(53)ら家族など計4人が出廷したとみられ、ミナスジェライス州裁判所が公判で証拠として調べている静岡県警作成の供述調書などに関する質問を受けた。日本政府からの「代理処罰」要請に基づく外国での公判で、日本国内で証人尋問が行われるのは今回が初めてのケースという。
 証人尋問は非公開で行われ、遺族側からは利江子さんと長女(25)、次女(23)の3人が一人ずつ出廷した。裁判官は、県警が事件後に3人から聴取した供述調書の事実確認を行い、3人とも「間違いありません」と答えたという。
 利江子さんに対しては、そのほかに「あなたは眠りは浅い方ですか」など、約15項目にわたる同州裁判所からの補充質問が行われたという。長女は裁判官に「その他に何かありますか」と聴かれ、「被告人の弁解内容はうそばかりなので、裁判でしっかり明らかにしてほしい」と答えたという。ほかにもう一人の関係者が出廷したもよう。
 今後、ほかの数人の証人尋問が国内の裁判所で行われるとみられ、証人尋問の書類は日本の最高裁、外務省を通じて同州裁判所に送られる。今回の事件では、同州検察庁が日系ブラジル人のアルバレンガ・ウンベルト・ジョゼ・ハジメ容疑者(35)を強盗殺人と放火未遂罪で起訴。3月の初公判で、検察側が被害者遺族らの証人尋問を裁判官に申請し、認められていた。
 利江子さんは弁護人を通じ、「今回の手続きを経験し、あらためて犯人が許せないと思う気持ちを強く抱きました。犯人には最高の刑罰を科してほしい」とのコメントを出した。弁護人の男性は「被害者遺族の声がブラジルの裁判所に届くことは非常に意義深い。今後、同様の国外犯処罰規定に基づく海外での刑事裁判で、日本で証人尋問が行われるケースが増えるのでは」と期待した。