「移民の歌でアルバムを」=井上祐見=南米ツアー終え帰国=新曲の参考に体験談募集

2007年8月2日付け

 南米各地で公演を行ってきた演歌歌手の井上祐見さん(31)が九回目のツアーを終え、七月三十日帰国の途についた。来年は日本移民百周年と同時に、井上さんの南米ツアーも十回目を迎えるのを記念し、移民の心情を歌ったオリジナル曲『ソウ・ジャポネーザ』に続く、新曲『笠戸丸』をひっさげて来伯する計画だ。
 井上さんは「実際の移民経験を新曲の歌詞に反映させたいので、ぜひ聞かせてもらいたい」と呼びかけた。『ソウ・ジャポネーザ』が神戸を出発した移民船の様子を歌った曲なので、その続編となる新曲では、移民船を降りて上陸する時の不安な気持ちや、最初の入植地に配耕された時の辛かった体験や思い出を歌詞の内容にちりばめたい、という。
 そこで、歌詞の参考になるような出来事、思い出を書いた文章を募集し、作詞家との打ち合わせに活かし、より移民の心情に近い曲を来年持ってきたい、との意向だ。文章の送り先はニッケイ新聞社編集部(Rua da Gloria, 332 Liberdade-Sao Paulo,S.P.CEP=01510-000 Jornal do nikkey Redacao Japonesa,深沢か稲垣)まで。
 今回のツアーを通して、各地で『ソウ・ジャポネーザ』が強い反応を呼んでいることを、井上さんはしみじみと実感しており、コロニアでかなり浸透してきたという感触を受けている。「九年間という年を積み重ねたからこその成果がでてきている」と振り返る。
 今回は六月二十九日に来伯。ピラール・ド・スル、クリチーバ、ウルグアイのモンテビデオとプンタ・デル・エステ、ドラセーナ、ツッパンの六カ所で単独公演を行い、クリチーバ国際舞踊祭、県連日本祭り、グァタパラ移住地、YOSAKOIソーラン大会、援協施設など様々な会場でもショーや交流会をした。
 なかでもピラールやツッパンでは市長も公演に参加。日本語がわからない人にも楽しんでもらうため、ショーにポ語通訳を入れる工夫もした。井上さんは「ツッパンでは若い世代の太鼓と共演できた。私と接することで日本語への関心を深めてくれたら嬉しい」。これまでは主に一世高齢者に聞いてもらう機会が多かったが、今回は「若人のためにも公演してほしい」との声をあちこちで聞くようになり、「活動の幅が広がった」という。
 来年は自身のデビュー十周年でもあり、すでに十カ所以上から誘いを受けている。井上さんは「新曲『笠戸丸』を持って帰ってきます。いずれは移民のことを歌った歌で、アルバムの作成までできれば」と意気込んだ。