マラリアやデングの媒介蚊=「町の中」にも「森」にもいる=感染、発症の因果関係知ろう=アレンケールの坂口さん説明

2007年8月3日付け

 【既報関連】マラリアを媒介する蚊(アノフェレス)はどんなところで発生するのか――、当ページ既報の松栄孝さんと坂口成夫さんの(両者の経験からくる)述べる内容には、根本的な違いがある。坂口さんは、七月二十五日付きで、「私の考え方を述べて読者の判断にまちたい」と、パラー州アレンケールから便りを寄せた。マラリアやデングに関する常識にかかわることなので、再度紹介する。
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 松栄さんは、二度にわたった記述で要旨つぎのように述べた。
 「流れのある、魚の棲んでいる川や、流れがなくても魚の棲んでいる水溜りには、蚊は発生しないように思っている」。
 「(インジオ以外の)ガリンペイロたちは、井戸を掘って不潔な水溜りをつくる。そんな水溜りには、蚊の幼虫の天敵はいない。だからデングやマラリアが発生するのではないか」。
 「内陸の生物の住む清水で、蚊が発生するのではなく、どこか人間のつくっている汚水で発生するものと思っている」。
 「(長年魚の採集をしていてみているが)魚の棲む清水、濁水にはボウフラの成育する余地はないということである。人間、それも文明の匂いの足跡のある場所の、魚の棲まない汚水でひっそりと蚊が発生し、マラリアが蔓延しているものと考える」。
 坂口さんは、つぎのように言う。
 「ガリンペイロによって汚染された泥水は、だんだん沈殿して泥土は下へ、澄んだ水は上へと分かれてくる。この水には魚はいないし、ボウフラを食べるほかの虫もいないので、ボウフラを発生させる良好な条件を備えている。だからアノフェレスやデングを媒介するアエデス・エジプシスを含めて他のたくさんの蚊を発生させる。しかし、マラリアやデングの病原菌(虫)を持った人がいなければ、マラリアやデングは発生しない。発生のメカニズムは、保菌(虫)者→媒介者→患者、ということになる。つまり、保菌(虫)者がいくらいても、媒介者はなければ発病しない。逆に媒介者がいくらいても保菌(虫)者がいなければ、発病しない」。
 「魚がいる川には、マラリアが発生しない、などということはない。現実に私たちが住んでいたところは、川から約百メートル、川幅は五~七メートルで、魚もサルジニャ、クリマタ、カラチンガ、トライーラ、パクーなどたくさんの魚が棲んでいたが、マラリアは日常茶飯事だった。いくら魚がいても一〇〇%ボウフラを食べることは不可能。どうしても何パーセントかは生き残り、これがマラリアを媒介することになる」。
 「アノフェレスは、ブラジル中に拡散していて、町の中にも森の中にも至るところにいる。原始林の木の洞に溜まった雨水や岩石の大きな窪みにもいる。ブロメリア類の植物は、葉の根本に水を蓄える性があり、これが蚊が発生するなどの原因となり、原始林であろうと、インジオがいてもいなくても、至るところにアノフェレスはいる」。
 「マラリアは、文化や生活習慣、すなわち形而上(はっきりした形がなく、感覚の働きによっては、その存在を知ることができない)のものではない」。
 「野生動物は、気温、味覚、視覚、嗅覚、聴覚の変化にたいへん鋭敏だ。これは、己を護るため、また種族を護るために必要で、自然にそうなったものと思われる。蚊も例外でない。濁っていたり、汚れていたり、臭かったり、変な味がする水には絶対卵を産まない。汚い水だったのが、時が経つにつれて澄んできたきれいな水に卵を産み付ける。しかし、それらはほんの一部で、もとから原始林にいたアノフェレスが一因で、侵入してきたガリンペイロの中にマラリアの保菌(虫)者がいて、それが因でインジオにマラリアを伝染させた、とみるのが妥当と思う」。