「移住とは何だったか」=宇佐美氏の笠戸丸講演会

2007年8月8日付け

 『笠戸丸から見た日本―したたかに生きた船の物語』(海文堂出版、〇七年)という著作がある宇佐美昇三さん=東京都在住=がポ語版出版の打ち合わせなどのために七日に来伯、十一日午後二時から「笠戸丸とブラジル」というテーマで講演会を行う。
 元ジャーナリストだった宇佐美氏はのちに駒沢女子大学教授に転身したが、その間、空いている時間を活用して四十余年にわたり笠戸丸について調べ続け、今年、集大成となる著書『笠戸丸から見た日本―』を出版した。
 研究取材のため、船が建造された英国から、ブラジルと世界中を精力的にまわり、膨大な資料にあたり、関係者に会って綿密な研究を重ねた。その集大成ともいえる前褐書は、他に類をみない濃い内容となっている。
 七日午後にニッケイパラセホテルで会見した宇佐美氏は、自分が必死に資料集めをしていた時に、ほとんどが話を面白くするために記述が代わっており正確なものが少なかったこと、また、様々な人の助けや支援があったからこそ研究を続けてこられたと、自分の体験をふりかえった。
 この経験から宇佐美氏は「今回の公演では、〃いい加減なことを書くな〃と〃後方支援の大事さ〃の二つをぜひ伝えたい」と笑顔で話した。講演会では、笠戸丸の一生について話した後、宇佐美氏本人の取材の体験談、その結果などについても話す予定。
 会場はブラジル日本文化福祉協会の小講堂で、二時間の予定、参加は無料。主催はインティトゥート・ヒョウゴ(ブラジル兵庫県事務所)、ニッケイ新聞社とサンパウロ新聞社が後援する。
 講演会開催にあたり、ブラジル兵庫県事務所の山川亮所長は「来年百周年を迎えるに当たって、その原点はやはり笠戸丸。ところが笠戸丸について、以外と知られていないことも多い。この講演を通して、〃移住とは何だったのか〃をみんなで考える良い機会になるのでは」と来場を呼びかけた。