「外から来た感じしない」=加賀の茶陶支える大樋さん

2007年8月9日付け

 一五八三年に前田家が入って以来、「加賀百万石」の城下町として金沢は日本有数の美術工芸文化を誇っており、大樋焼本家は、その加賀の茶陶を長い間支えてきた。その十代大樋長左衛門の長男である陶芸家、大樋年雄さん(49)が視察のために七月二十六日に初来伯し、六日に帰路についた。
 当地の芸術家に会い、ギャラリーや美術館巡りをした。「ここでは、自分が外からやってきた感じがしないんですよね」と不思議そうな表情を浮かべる。「宗教や人種で判断しない」と思ったという。
 日系人は何世であるかや日本の出身地を大事にしていると痛感。「東京にはいろいろな地域から集まっているが、自分のルーツをそこまで意識しているだろうかと思い、自己反省の材料になりました」と感想をのべた。
 二日にはサンパウロ市の間部邸のアトリエを訪ねた。「まったく古くない。誰にも似ていない。独特の個性がある」。その作品からグローバル化の対極にあるなにか、世界の流れを意識せずにただ一生懸命に作品をつくった結果、逆に世界レベルに達したような印象を受けたとの感想も。
 最も古い伝統を引き継ぐ仕事をする傍ら、北米各地、中国、台湾などでも前衛的な公開制作を行ってきた。現在も北米ロチェスター工科大学客員教授をつとめる国際派でもある。
 「五〇%は金沢ローカル、残り半分は日本をルーツにせずに日本に感動している人たちの視線でいる」と〃外から見た日本〃を強く意識している。
 来年の百周年に関して、「僕にできることはないか」と探しているという。