人文研=娘の妙さんら百人が集い=評伝「鈴木悌一」出版記念会

2007年8月14日付け

 サンパウロ人文科学研究所による百周年記念事業『人文研研究叢書』の第六弾「鈴木悌一―ブラジル日系社会に生きた鬼才の生涯―」(鈴木正威著)の出版記念パーティーが十日午後六時から、文協ビル貴賓室で開かれ、娘の妙さんら親族を始め、約百人が集まった。
 司会は古杉征己同研究所研究員が務めた。著者の鈴木氏はあいさつのなかで、「戦後コロニアのリーダーだった山本喜誉司が描いたグランドデザインを実行に移した」とその業績を称え、「酒、友、文学、絵を愛した悌さんを知ってもらえれば、望外の喜び」と話した。
 悌一が創設したサンパウロ大学日本文化研究所の二代目所長を務めた妙さんは、「皮肉屋で厳しかったが、いつも温かい言葉で迎えてくれた」と語り、大学からの帰り、夕食前の一杯を飲みたいがために、運転を急かせされたエピソードなどを披露、会場は笑いに包まれた。
 脇坂勝則顧問が「著者が六年かけ、苦心惨憺して書いた。よく味わって読んでほしい」とあいさつした。
 続いて、辻哲三監査の乾杯の音頭でカクテルパーティーが行なわれた。和やかな雰囲気のなかで、出席者らは歓談を楽しんだ。鈴木氏は、多くの人に労いの言葉をかけられつつも、大仕事を終え、満足そうな表情を見せていた。
 会場で息子の一郎さんは、「大人になってから、あまり話したことはないけど、子供の頃は、釣りに連れていってくれた。僕はお酒を飲まないので、一緒にピンガっていうのはなかった」と笑いながら、思い出を話した。
 悌一が結婚前に交際していた金村文子さん(旧姓藤田、90)と、文子さんとの間にもうけた悠一さんも会場に姿を見せた。
 「悌一さんは、はにかみ屋でね。自分で何かを書くことがなかったから、今回は、(鈴木さんが)よく書いてくれました」と文子さんは話し、「悠一と性格がそっくり。どんな人だったかって? それは本にしっかりと書かれてますよ」と優しく微笑んだ。
 なお、会場では本の販売も行なわれ、七十三冊と好調な売れ行きを見せた。
 本の価格は五十レアル。ご希望の方は、人文研(電話=11・3277・8616)まで。