コラム オーリャ!

2007年8月15日付け

 機会あって、九十年以上前の日本移民を弔った位牌堂を訪ねた。アララクアラの西郊、街道にサンパウロ州の中心を示す錘状の塔が立つ、小さな町だ。
 そのサンタコンスタンサ耕地に配耕された移民のほぼ半数が、二十歳未満の少年少女。取材で移民原簿を繰りながら、死者の中に学齢期に満たない幼児も多かったことを知り、胸をつかれた。
 後続はなく、同地に日本人が入るのは戦後になってから。今では一家族という。町の老人に聞いても、二百人からいた日本人にまつわる言い伝えはないようだった。
 それでも、堂は今も清潔に保たれている。建立から半世紀を経て現代へ伝えようとした人たちの熱意があったこと、今も伝える人がいるからこそ、なのだろう。
 ただこちらが知らないだけで、今もどこかの町に、幾多の初期移民の墓標が人知れず佇んでいるのかもしれない。(ま)