「100歳からが人生」=101歳曻地教授が講演=よく噛み、頭使う=新しいことに興味持て=300人から共感の拍手

2007年8月30日付け

 今月十六日の百一歳の誕生日から四度目の世界一周講演旅行に日本を出た曻地三郎さん(しょうちさぶろう、福岡教育大名誉教授、福岡市の障害児教育施設「しいのみ学園」園長)が、二十六日着聖。特別講演が、二十八日午後、サンパウロ市リベルダーデ区の宮城県人会会館で開かれた。聴衆は約三百人。会場は立ち見が出るほどにいっぱいに溢れ、百一歳とは思えない気力溢れる声で呼びかけられた「百歳からが人生」の言葉に、会場からは大きな拍手がまきおこった。
 曻地さんは写真をスクリーンで映してこれまでの世界旅行の経緯を説明。それにあわせて、長寿の秘訣や教育理念、廃品を利用した手作りのおもちゃなどについて語った。
 曻地さんは「習慣健康法」として「何を食べるかが問題ではなく、いかに食べるかが大事」と説明。食事の際には一口で三十回噛むことを強調し、痴呆を防ぐ、消化を助けて小食にする、あごを強くして顔にしわが寄らないなどの効果を述べ、「ガムを噛んでも大丈夫」とすすめた。
 また「一日一知」の精神で、「日々新しいことに興味をもち、頭を練ることが重要」と指摘。現在もラジオで韓国語を勉強するほか、毎週一回家庭教師をつけて、ロシア語と中国語を勉強していると話し、日記はすべて外国語でという徹底ぶりを披露した。
 つづいて「体を動かせば心も動く」の考えから、冷水摩擦も毎朝続けていると紹介。講演の途中には、「曻地式棒体操」を来場者に呼びかけていっしょにやり、寝たきりだった老人が少しずつ体を動かせるようになったといった実体験をふまえて説明した。
 また「しいのみ学園」の教育理念にふれて、「活動」「許容」「賞賛」「自信」などの〃教育十大原理〃を紹介。叱らず誉める、こどもの興味・達成感を尊重する、支援者と子どもが共在し肌と肌のスキンシップを大切にするなどを奨めた。また三歳児での教育の重要性をのべ、「創造性」に溢れる教育を力説した。
 曻地さんの二人の息子はともに脳性小児マヒにかかり、すでに他界。そんな苦労や体験を「禍転じて福と為す」の精神で乗りこえてきた経験から、「楽観的にユーモア(笑顔)を大事にする」こともすすめた。
 今年の書初めで曻地さんは「百歳前進」「百歳本番」「百歳勝利」と大胆に書きあげた。今回の世界旅行ではアメリカのマイアミビーチを「イエローパンツに白帽子姿」で満喫、その姿も写真で紹介した。
 「日本男児ここにあり。自分が死んでも子や孫が立派になってくれればいい。これを悟るのに百一年かかりました」。そう講演の最後に語った曻地さんの言葉に、会場からは一際大きな拍手がおくられた。
 会場前方に座っていた上村紀子さん(かずこ、73)は、「ほんと素晴らしい内容で感動。私も趣味のヨガとピアノを百歳、それ以上にまで続けて元気に過ごしたい」と笑顔で話した。
 曻地さんは今月末まで滞伯、その後スペインを経てロシアを訪問し、モスクワ市立大学でも記念講演をおこなう予定でいる。

 【プロフィール】
曻地三郎(旧姓山本)、一九〇六年八月十六日、北海道釧路市生まれ(本籍山口県)。広島師範・広島高師・広島文理大心理学課卒業。小学校・女学校・師範学校の教員を経て、福岡学芸大学教授(現・岡教育大学就任)。福岡教育大学を七〇年に退官。現在同学名誉教授。医学・文学・哲学・教育学博士。五四年「しいのみ学園」を創立。現在理事長兼園長。(同学園公式ホームページより)