コラム 樹海

ニッケイ新聞 2007年10月3日付け

 世界の殺人事件の1%がサンパウロ市で起きている――という先日の国連年次報告は衝撃的だった。ブラジル内だけで毎日百人が殺され、その半分がリオ市とサンパウロ市だという。見たくない数字だが、現実なら致し方ない▼被害者の中で最も多いのは、ファベーラに住む二十五歳までの若者であり、一般生活エリアに限ればそれほど酷くはない。数字だけ見ると、あたかもサンパウロ市全体が危ないかのような印象を受けるが、実際に住んでいる感想としては、そこまで酷くない(ある程度危ないのは当然だが)▼業界紙によれば、日本旅行業協会(JATA)の日伯観光推進委員会は、来年の日本移民百周年関連行事に関して、三千人の送客を目指すと発表した。このような公式ルートにのらずに一般観光客として来る人も多いことを考えれば、マルタ観光相が予測するように来年一年間で日本から十万人というのは、ありえる数字かもしれない▼開き直ってこの二つを考え合わせると、極論かもしれないが「少々はイヤな思いをしてもいいという覚悟を持って来てもらった方がいい」とも思ってしまう。日本国内の観光旅行の延長みたいな感覚で来て痛い目に遭ったとき、ブラジルの印象を悪くして帰るだけであり、国際交流には逆効果だ。「用心だけは十二分にして実際は何も起きなかった」というのが一番の理想だ▼前出の国連報告によれば、ブラジルの国内総生産の11%が警備関連に支出されており、百五十万人もが雇用されている。コロンビアの25%、メキシコの12%に比べれば低いが、世界有数の水準だ。来年はきっと、この人材の取り合いも切迫するに違いない。(深)