コラム 樹海

ニッケイ新聞 2007年10月6日付け

 あの金正日さんは、芝居と映画が大好きで韓国から映画監督を拉致のように引っ張ってきたのに北朝鮮を捨て亡命され地団太を踏んだ。が、今もこの趣味は変らないらしく―韓国の   大統領が土産にと、人気女優イ・ヨンエが出演の映画DVDを贈ると、それまでのむっつり表情からニコニコと笑顔になり大喜び。よほど嬉しかったらしく、お返しにと名産のマツタケを4トンも渡してご満悦だそうな▼先頃、やっと北と南を結び38度線を往来する京義線を使い北京五輪には、南北の応援団が一緒になって参加しようと申し合わせたのは喜ばしい。50年を超える敵対関係から友情と親愛に満ちた付き合いができるのは、朝鮮半島だけではなく、国際的にも大歓迎である。南北首脳は、8項目からなる宣言に署名し、朝鮮戦争の休戦協定に代わる協議をしようの呼びかけも素晴らしい▼だが―である。いろんな約束事は結構ながら、両首脳が核廃棄という最大の難問について突っ込んだ話し合いをしたのかどうかは、真に疑わしい。どんな取り決めをしても、「核の放棄」がない限り、平和を望むのは無理がある。6ヵ国協議は「核施設の無能力化」で合意したのだから、その具体化について詰めた議論があってもいい。が、宣言は、合意の履行に「共同努力する」にとどまっている▼韓国と北朝鮮は、これまでにも、核兵器の開発や実験を禁止し、非核化宣言も出しているけれども、遺憾ながら北朝鮮の核疑惑は大きい。金大中前大統領の「太陽政策」と 大統領が唱える「宥和政策」はいいが、単なる言葉遊びに終ってはなるまい。  (遯)