カラオケ=パラナの強さの秘密は=日本のグランプリ3連覇=伯代表は〝本気〟で歌う?=少ない機会に照準あわせ

ニッケイ新聞 2007年10月10日付け

 毎年五月に、カラオケ発祥の地である日本で開催される日本アマチュア歌謡連盟(通称・NAK)主催のグランプリ大会は、コロニア歌手の夢の舞台。その大会にパラナ出身者がブラジル代表として出場し、今年を含めて三年連続で優勝している。なぜパラナ出身者はカラオケが強いのか――。歴代の実力歌手を育ててきた折笠リカルドさん(パラナ文化運動連盟歌謡部長、NAK南連盟会長)に聞いてみた。
 同グランプリ大会には、日系コロニア最古の歌唱大会「全伯歌謡唱歌コンクール」(日伯音楽協会主催=北川彰久会長、上岡正雄実行委員長)で優勝した実力者がブラジル代表として出場する。
 先月三十日、サンパウロ市リベルダーデ区の客家センターで開かれた同コンクールでは、サンパウロ州モジ市の塩見由味さんがグランプリに輝いた。これでサンパウロ勢は面目を保った形だが、昨年までの三年間、全伯とともに全日本も制したパラナ勢の強さの秘密には興味がわく。
 「ソルチ(運)があったからだとおもいます」―。折笠さんは開口一番にそう謙遜して笑顔でこたえた。
 日本で開催される同グランプリ大会は、国内・海外の十数カ所の地区予選会やNAK主催の懐メロ大賞、テープ予選会をクリアした〃のど自慢〃が出場するアマチュア歌手界の祭典。
 その大会に今年、十八歳の三沢モニカさん(マリンガ市)が「娘に」を歌い優勝。昨年は岡田ケイラさん(パラナバイ市)、一昨年は芦原ジアネさん(マリンガ市)がグランプリを獲得。ジアネさんはコロニア歌手で有名な平田ジョー氏の妹で、三人ともパラナ州出身だ。
 折笠さんによれば、同連盟が主催する州規模のカラオケ大会は年間で十ほど。懐メロ、思い出のメロディー、四季の歌祭りなど、種類を分けて開催しているが、サンパウロ州に比べると同規模の大会は少ない。
 そのためか「パラナの人は少ない発表の場にあわせてしっかり練習してくる」と折笠さんは言う。数少ない州でのタイトルを獲得する意識が高いそうだ。
 加えて上岡実行委員長は、「パラナの人たちは昔風な日本人の気質を色濃く残している。マナーもよく歌に対して真剣に取りくみ、指導者のアドバイスもしっかりと聞いている」と説明する。
 パラナ州では同連盟が主催するカラオケ支部が七十ほどある。よく活動しているのは四十支部ほど。連盟に登録する州のカラオケ人口は約二千五百人。そのうち千八百人ほどが大会に参加する人達だ。マリンガを筆頭にクリチバ、ロンドリーナ市に実力者が多い。
 日本のグランプリ大会でブラジル勢が活躍するのはなぜか――。
 その問いに折笠さんは、「日本の人は音楽をストレス発散の目的にしている印象がある。ブラジルからの参加者は大会での優勝を本気で狙っている」と話す。コロニア歌手は自信の一曲を丹念に仕上げ、プロ並みの歌い振りを披露するのも特徴だ。
 NAK日本本部認定の歌謡師範でもある折笠さんによると、上手い歌の基本は「語頭と語尾をはっきり歌うこと」。正しく音程を合わせること、拍子のリズムを意識すること、声を前にだすイメージも〃歌のキレ〃を決めるそうだ。
 最近のブラジルのカラオケは、子育ても一段落した五十から六十歳前後の日系夫婦の人気を集めている。「歌の経験のない夫婦が一緒になってカラオケをはじめるケースも増えている」(折笠さん)そうだ。また上岡さんによれば、配偶者に先立たれた未亡人がカラオケを始めることもあるという。