県連ふるさと巡り=日伯の絆たどる旅=ES・ミナス路を行く=連載《3》=エスピリト・サント=ムケッカ料理発祥の地=伝統の土鍋造りに釘付け

ニッケイ新聞 2007年10月18日付け

 ヴィラ・ヴェーリャ市のノッサ・セニョーラ・ペーニャ(nossa senhora penha)教会に続いて一行は、一九二〇年にドイツ移民によって建てられたガロット工場(チョコレート工場)を訪れた。
 このガロット(galoto)の名前の由来は、昔のドイツ移民の子供たちが、多くの飴を販売していたためにこの名前が付けられている。
 ガイドのエリオさんが「今回は時間の都合上工場見学は行えません」との話に一行は残念そうな表情。しかし、「買物はできますよ」と悪戯っぽく言うと、バスの中から喜びの声が聞こえた。
 工場に着くと、一行は一直線に売り場へ向かい、思い思いにチョコレートを買い込んだ。「サンパウロで買ってもそんなに値段は変わらないかな」と、両手一杯のチョコレートを見ながら呟く人も。
 その後、市内で唯一大型車が通れるカルロス・リンデンベルグ通りを抜けて、欧州などに輸出も行っている有名土鍋つくりのパデレーラ組合が運営するパネレイラス工場を訪れた。
 ファベーラの中にある工場内は周囲との調和が保たれ、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。足で土鍋の材料を捏ねたり、仕上げをしている作業員の姿に一行は興味津々に見入っていた。訪れた時には土鍋の焼き上げを行っていて、マングローブ林のタンニンを土鍋に塗りこんでいた。
 刷毛を使っている様子を見た一行からは「なぜ、タンニンを一杯にした入れ物に漬けて色をつけないのか」との質問。これに対する「いったん入れると取れなくなり、斑ができなくなる」との答えに、一行は感心した様子だった。
 土鍋を買い込んだ一行は、昼食を取るためにエスピリト・サント州が発祥の地といわれるムケッカ料理を食べるために地元のレストランへと足を運んだ。
 ムケッカとは魚料理に調味料を入れて長時間煮込み、一度火から離して、土鍋の余熱を利用してマンジョッカの粉を入れて煮込んだもの。作り方だけ聞くと簡単なものに聞こえるが、微妙な火加減が難しいと言われる伝統料理だ。
 中村伯毅さん(ひろき、二世、福岡)は「何回かは食べたことのある料理だけど、ここのは美味しいね」と満足した様子で何度もおかわりをしていた。
 市内観光を終え、ムケッカ料理を楽しんだ一行はバスでホテルへと戻り、夜の交流会の準備に入った。
(つづく、坂上貴信記者)

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