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アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(9)=多彩なアマゾンの漁=ウナギ怖がるインジオ

ニッケイ新聞 2007年10月19日付け

 ◇魚の話(2)
 森の中や川のなかには食糧が充満している。それを手に入れる術を知らないために飢餓に陥る。ピサロが失敗したのは、率いるインジオと現地に住むインジオと言語や生活習慣が異なるために、必要な情報や知識が得られず、獲れるものが獲れなかったことによる。
 それで、アマゾンで行われている漁の方式について述べる。これは、日本と同じところもあるが、大分違ったところもある。まず原始的な方法から。
 〔アルポン(銛)〕これは大きい魚ピラルクーやペイシェ・ボイ(ジュゴン、哺乳類)などの漁に用いる。
 〔フレッシャ(矢)〕釣れない魚や餌など見向きもしない魚で、水面近くにいるものに用いる。カノアの舳に立って弓を番え、浮いてきた魚を射る。ヤジリと矢は別になっており、長さ二メートルくらいの紐で結ばれていて、これを矢に巻いて、ヤジリを矢につけて射る。魚に当ると、魚は逃げる。しかし、ヤジリが喰い込んでいて、さらに二メートルくらい離れて矢が続いている。この矢が浮子と同じで、どちらへ逃げても矢が続いているので、容易に捕らえられる。
 インジオの中には、矢に五、六メートルの紐をつけて、瀬になったところに所かまわず射込んでいる。それでも時々魚に当って引き寄せられている。
 〔コナムビー〕菊科の小潅木で少量用いると利尿剤になるが、本来有毒で、この葉や若い枝を搗き砕いて、これを乾季で水が止まっている所に用いる。すると、魚は中毒して浮いてくる。一応禁止されているので、浮いた分だけ大急ぎで集めて逃げる。
 大きな魚は抵抗力があるので、もっとあとになってから浮いてくる。これらが濁って悪臭ふんぷんである。このため、小さな魚などが死んでしまい、ボーフラを食う魚がいなくて、蚊の大発生になり、ひいてはマラリアの流行となる。
 このようなわけで、毒流しが流行した年や、異常乾燥で川の水が乾ききってしまうと、その年はマラリアの流行が激しい。
 〔チンボー〕蔓性の植物で、その根塊を砕いたものをコナムビー同様にして、用いる。この一種は、日本でも使われたデリス根である。いずれも魚類には毒性が強いが、昏倒して浮いた魚は食用として差し支えない。
 〔かい掘り〕これは農閑期のレクリエーションの一つでもある。子供連れなどでワイワイやる。あらかた水を掻い出して魚を捕ったあと、底の泥をかき回すと、ウナギが出てくる。ここでムッスンといっているが、それを捕まえるのにまたひと騒ぎ。インジオたちはこれに食いつかれたら命がないと怖気を振って近寄らない。
 ヌルヌルして捕まえにくいが、カボチャの葉を掌にして掴めば、難なくつかめる。
 サンパウロのほうで、ブラジルにはウナギがいないとかで、日本から輸入して高級魚になっているが、ここでは小半日かい掘りをやると、一斗缶に半分ほど獲れる。これを蒲焼にして堪能したのは言うまでもない。
 ただ、日本のウナギと少し異なるのは、尻尾の先が丸くなっていないことで、アナゴの尻尾みたいだ。それに色が少し薄い。鹿児島でタタントツというウナギの一種に似ている。それに鼻先の白くなっているのもいる。あとはまったく変りがない。ただ少し骨が少し固いような気がする。これは割くときに感じる。つづく(坂口成夫、アレンケール在住)



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