ネットワーク化推進を確認=サンパウロ市で移民史料館会議=8地域の代表が意見交わす=来年2月から百周年写真展=JICAが記録事業を支援へ

ニッケイ新聞 2007年10月23日付け

 国内各地の日本移民史料館関係者が意見を交わしあう第三回史料館会議が十九、二十日、JICAサンパウロ支所会議室で開かれた。サンパウロのブラジル日本移民史料館とJICAボランティアの呼びかけで開催。移民百周年記念写真展開催や写真集出版についての進ちょく状況が報告されたほか、史料館ネットワークの組織化案や各史料館の現状報告などの議題について熱心に話し合われた。
 今回の会議にはJICAボランティアをはじめ、小林正博JICAブラジル所長、栗原猛ブラジル日本移民史料館運営委員長、大井セリア同館館長ほか、サンパウロ州レジストロ、グァタパラ、アラサツーバ、ペレイラ・バレット、リンス、バストス、アリアンサ移住地、パラナ州ローランジア市などの史料館関係者らが参加した。
 中村茂生JICAシニアの司会で進行。会議でははじめに、来年の記念写真展や写真集で用いる団体名について審議し、現時点では統一した組織名は定めず、それぞれの史料館や施設の名前を列記する方向におさまった。
 また主要議題の史料館ネットワークの組織化に関しては、法人化せずに、サンパウロのJICAボランティアらが中心となって試案を作成し、今後の史料館会議で検討していくことに決まった。
 さらに同ネットワークに関連して、各史料館が所有する物品の貸し借りをスムースに行えるようにすることで合意。資料のデータ化に関しては人員や費用の問題から、アナログ式でもできる範囲で資料整理をすすめることも強調された。
 小笠原公衛シニアボランティアは同写真展について、日伯両国で「来年二月中旬から十月ごろにかけて開催する予定」と報告。日本ではJICA横浜が中心となって全県を巡回して開催する計画で、会議に出席した小林正博JICAブラジル所長も「日本ではJICAの全面的な協力で実施する」と言明した。
 加えて同所長は「あしあと」プロジェクトや百周年誌編纂、移民史料のデジタル化、映像記録委員会事業などの記念事業支援金として、「JICA本部に今年度予算として五百万円を計上するよう要請している段階」と述べた。
 また同写真集について小笠原シニアは、写真展で使用する写真を中心に、二、三百枚ほどを掲載すると説明し、現在、日伯両国の大手版社に出版を打診中とした。発行部数は未定で「予算の問題もあるができればハードカバー式の写真集にしたい」と語った。
 写真展で使用する写真は現在、サンパウロの日本移民史料館が所有する約一万枚の写真から百二十枚ほどまで絞りこんだ。今回の会議での意見を参考に、小笠原シニアらが中心になって年末までに百枚まで選定をすすめることに決まった。
 二日目の会議ではアリアンサ移住地に赴任する学芸員の大野和則ボランティアが、「史料館の作り方―資料収集・展示・保存・教育活動」と題して講義をおこない、世界や日本各地の博物館の運営実態などについて紹介。そのうえで「史料館を黒字で運営するのは難しいこと」と指摘した。
 これに関連して関根隆範日本移民史料館運営委員は「百周年後の史料館の運営計画をしっかりと検討すべき」と指摘。あわせて「史料館でのガイド養成や財政的な独立を目指してのイベント開催なども大切」と強調した。
 また栗原猛ブラジル日本移民史料館運営委員長は閉会のあいさつで、ブラジル各地の史料館の意義を踏まえたうえで、「難しいことだがサンパウロでも各地の史料館でも自分達で食べていけるように努力していきたい」と目標をのべた。