コラム 樹海

ニッケイ新聞 2007年12月18日付け

 死刑については賛否両論があって中々に難しい。今、世界には190と幾つかの国・地域があるが、死刑を執行しているのは126ヵ国に及ぶ。世界一は中国でイラン、パキスタン、イラクと続く。なかでも中国は圧倒的でアムネスの報告では年間に3800人が処刑されており、8000人の説も有力で実態は不明▼殺人事件でも審理は1日で終わり次回は判決。死刑の判決であれば、即日執行も珍しくない。犯罪発生を抑止するの狙いがあるのだろうが、歴史や文化的な伝統もあって国民の支持は極めて高い。死刑囚をトラックに乗せ罪状や刑罰を書いたプラカードを首から下げ、その内容をアナウンしながら街中を引き回し、子供らが歓声を上げて追いかける▼そして―。公開銃殺。これに対する批判は多い。英仏独など欧州では「死刑廃止」を盛り込んだ「欧州人権条約」もあって死刑はない。だが、これが国民感情と一致するかとなると、疑問視せざるをえない。イギリス政府も死刑廃止を目指したけれども、国民の80%超は「死刑支持」だし、法的に正式な廃止と決まったのは10年ほど前からである▼ブラジルにも死刑はないけれども、欧州を含め宗教の影響が強いのではないか。アメリカは最高裁が死刑を合憲と認め38州で死刑がありハワイなど12州に死刑制度はない。と、死刑の「是」と「否」の考え方は二つに別れる。勿論、日本にもある。先頃、処刑した死刑囚の氏名を公表し話題になったが、防犯の意味合いからも、犯罪の犠牲となった遺族らの心情を思えば、鳩山邦夫法相の決断は評価しても良いのではないか。(遯)