「O NIKKEI NO BRASIL」=ブラジルの日系人出版=統合強調した2世の歴史観=原田氏「混血しても文化残る」

ニッケイ新聞 2008年1月24日付け

 原田清弁護士がコーディネートし、十一人の二世陣らが中心となって分野別に日系人の活躍ぶりをまとめた『O Nikkei no Brasil』(ポ語、ブラジルの日系人)の出版記念会がサンパウロ州議会大サロンで十五日に行われ、予想を超える約八百人が駆けつけ、中には腕に何冊もかかえて著者サインの列に並ぶ人まで見られた。
 日系人のブラジル社会への統合プロセスに関する分析、二世らの活躍、日系社会の将来展望、デカセギ問題までを、二世側の歴史観によって論じたポ語による六百三十頁の大著だ。
 原田氏自身が記した第二章「日系の統合と発展のプロセス」には、二世の側からみた興味深い「nikkei」の定義が書かれている。
 「今日のニッケイは日本人とは違う。単に二重であるのではなく、日本人の魂をもってブラジル人として振る舞う。ニッケイはブラジルを母国とする日本人とその子孫のことで、本国ではもう見られないような(伝統的な)日本文化をわかちがたい絆として引き継いでいる」(四十七頁)。
 原田氏は「コロニアという言葉は適当ではない。私はセギメント・ニッケイと表現する」と強調する。あくまで「統合」が進んでいることを前面にたてて、ブラジル社会の一セギメント(一部分)との存在を強く意識している。
 原田氏によれば、二世からすると「コロニアという言葉には閉鎖的というか、ブラジル社会とは分離しているような印象がある」と感じている。
 この出版記念会に、二世の出世頭である斉藤準一空軍総司令官、小野フェルナンド英三連邦高等労働裁判所判事、飯星ワルテル連邦下議が列席したことを挙げ、「軍、司法、政治の三権の要職にある日系人が出席してくれた」と統合の成果を喜ぶ。
 日系人の果たしている役割として「ブラジル社会に入って日本文化を教えている」とし、「混血が進んで顔は変わるが日本文化は残る。アメリカの影響を強く受けた今の日本よりも、さらに伝統的なものを残す」と予測している。
 どんな伝統的な日本文化が日系人に残るのかとの問いに、「勤勉、真面目、責任感、義理、恩、礼などが残ると思う」と胸を張って答えた。
 州司法界の頂点の一人、サンパウロ州検事正のユリカ・タニオ・オクムラさんに三冊を購入した理由を問うと、「上司や同僚のブラジル人に日本文化を知って欲しいから」と微笑んだ。
 十一人いる著者の一人、大原毅氏は「こんなに集まったのは日系社会に対する関心が相当ある証拠。幅広い分野にわたって分かりやすい言葉で書いてあるから、ぜひ多くの人に読んで欲しい」と語った。
 斉藤空軍総司令官も「良い本だ。このために特別にきた」と賞賛し、関係者の労をねぎらった。
 全部で二千部を印刷。今回は三百冊を関係者に無料配布し、二百三十冊を四十レアルで販売した。今後はアリアンサ(日文連)や文協、百周年協会で六十レアルで販売する。