ヴィラ・エスペランサ文協=46年の歴史に幕下ろす=会館を希望の家に寄付=「悲しいけど、嬉しい」

ニッケイ新聞 2008年1月29日付け

 四十六年の歴史に幕――。一九六一年に創立、聖東ヴィラ・エスペランサ地区の日本人や日系人の憩いの場所として利用されてきたヴィラ・エスペランサ文化体育協会(佐々木一衛会長)が、会員減少などの理由により、二月二十一日の定期総会をもって活動を停止する。これに先立ち同会では、文協会館を希望の家福祉協会に寄贈することを決定、二十三日に譲渡書類の署名式が行なわれた。
 同会館の敷地面積は約五百平方メートル、価格は約二十万レアル。木多喜八郎理事長ほか、希望の家関係者が、寄贈に必要な書類にサインを行うために、同地区にある佐々木会長(85、福岡県)の自宅を訪ねた。最近は病気がちなために自宅を訪れた。
 寄贈に関する書類の内容が読み上げられると、佐々木会長は感慨深げに耳を傾けていた。説明後に、書類にサインを行った佐々木会長は同文協の歴史を説明した。
 建設当時は、貧乏ながらに同地区近辺でできた初めての会館で大きなものだったという。十年ほど前には、百人を越していた会員数も、デカセギの影響で若者はほとんどいなくなり、会員数も現在の六十人ほどに落ち込んだ。数年前から経営不振により、全員一致の意見で譲渡することが決まった。
 「会館なんて必要ないんだ、という二世たちの考えが悲しい」と佐々木さんは話す。「先人が苦労して建てた会館を自分たちの代で譲渡してしまうのは寂しい」とこらえていた涙が頬を伝った。また、「死んだ両親がいたときは、まだ日本人も多くて、同地区も賑やかだった」と哀愁を漂わせながら往時を振り返った。
 その後、場所を同地区内のレストラン「カンパイ」に移して、食事会が開かれた。文協関係者など合わせて約三十人が集まった。
 木多理事長は「今回の寄付は我々の大きな励みになる」と感謝の辞を述べた。佐々木会長の代理で、下本八郎同文協顧問が「会館はコロニアの慈善団体へ、との意向があったために嬉しく思う」とあいさつ。乾杯の後、関係者一同で歓談した。
 長年婦人部長を務め、現在でも相談役をしている水口ヤスさん(89、大分県)は、会館当初の苦労話を交えながら「演芸会とかで楽しかったね。今、本当は悲しいけど、心から協力しているから嬉しい」とうっすらと涙を浮かべながら感想を語った。