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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年2月5日付け

 日系人の〃地元〃サンパウロ市にくわえ、今回はリオのカーニバルでも百周年をテーマにしたパレードが行われた。二都のスペシャル・グループが共に祝ったのは初めてだ▼サンバという「国民音楽」は、戦前のゼッツリオ・バルガス独裁政権による新国家体制によって制定された。元々はリオの地方音楽だったものが、欧米に伍するブラジル独自の文化として「国民音楽」に選ばれた▼国家の伝統を公に定めることでアイデンティティを固めるバルガスの考え方は、日本移民にとっては苦い思い出である強硬な同化政策と表裏一体の関係にある。その本場リオで、日本移民をテーマにしたパレードが行われたことは、百年目にして保守的な一般大衆が「ジャポネースもブラジル〃民俗〃の一部である」と認めたことに他ならない▼リオの例が日本移民の影響の広さを示すとすれば、モジ市カーニバルの共通テーマに選ばれて全チームが日本移民賛歌のパレードを繰り広げたことは、浸透度の奥行きを示すものだ。これ以外に南マ州やアマゾナス、SC各州都でも百周年をテーマにサンバパレードがあった▼「ブラジルに日系人あり」とのメッセージは、カーニバルの映像を世界百カ国以上に中継したグローボ国際放送や、各国メディアを通じて世界中に流れた。後年、その影響はじわじわと出てくるだろう▼「もし日本移民がいなければ、今のブラジルとは違っていた」とTV解説者が語っていた。バルガスの同化政策に耐え、必死に残してきた日本移民の文化的営為が今、高く評価されている。準備作業をしてきた関係者に謝辞を捧げたい。(深)

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