アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(27)=飼われて家に居つく亀=猛毒、身を捨てて毒蛇を殺す蟇

ニッケイ新聞 2008年2月20日付け

 ◇爬虫類の話 蛇類
 さきに蛇の話で述べた。
 ◇亀類の話
〔タルタルーガ〕
 体長一メートル足らず、幅五十センチになる。沿岸の住民の大切な食料源である。最近は、乱獲がたたって、頓に減少。乱獲を禁止したり、卵を孵化させて小亀を放流したりしている。肉は軟らかく、美味である。
〔トラカジャー ピチウー〕
 ともにタルタルーガより小型で、体長三十~四十センチくらいである。肉も食べるが、特に卵を賞味する。
 家の庭に二メートル×二メートル×七十センチくらいのタイル張りのタンクがあり、それにトラカジャーを飼っている。大体七、八匹いて、大きいのは長径三十センチ、小さいのは十センチそこそこ。這い出しては庭を散歩している。暑い日は、ドブンとこのタンクに飛び込んで、亀と一緒に水浴びをする。孫たちは大騒ぎで潜って亀を捕まえたりして遊んでいる。亀もこちらを知っていて、食べものをねだりに来る。里芋の葉が大好きで、パンや釜にこびりついた米粒などを洗ってざぁとタンクに空けると、大急ぎで寄って来る。たまによその子がタンクに入ったりすると、お尻に食いついて、キャーと悲鳴をあげさせたりする。
〔ジャボチー〕
 陸棲で体長五、六十センチになる。主として果実や柔らかい草を食べる。よく飼われている。野菜の切れ端を与えると、喜んで食べる。それで、主婦が台所でカタン、カタンとまな板で何か切っている音がすると、どこからともなく、のそりのそりと出て来る。
 ある日本人の所で飼っていたのは、何を勘違いしかのか、家猫に恋をして、猫の行く所、行く所、のそりのそりとついて歩く。猫は迷惑そうな顔?をして、ハーッ、プッとやるが、平気な顔で、のそりのそりとついて行く。
 ある人の所では、引越しするのに、亀を連れていくわけにもいかないので、河の向こう側に持って行って放したことがある。二、三日して台所の戸にコトン、コトンと何か当る音がするので、戸を開けてみると、何と放した亀が帰っていた。また放すのも可哀想なので、飼ってくれる人を探して進呈したという話である。

◇両棲類の話(1)
 高温、多湿、湿地や沼沢地の多いアマゾンでは、蛙の種類も量も多い。
〔サッポ・クルルー〕
 蟇蛙。日本と同じであるが、大きいのは体長三十センチを越すのも稀にはある。
 道の辺の威猛高なる大蟇 に鼻息荒げ馬は進まず

 眼の後ろ側の嚢中から出る白い液汁は有毒である。テレビで実演したのを見たことがあるが、毒蛇の口の中にこの白い液汁を注入すると、数秒間で蛇はのた打ち回り、まもなく死んでしまう。
 蟇を呑み込みかけた蛇は、慌てて吐き出そうとするが、歯が内側に向かっているので、吐き出すのは容易ではない。まごまごしている内に蛇はのた打ち始めることになる。身を殺して、敵を斃し、種族を救う。なんだか特攻隊みたいな奴で、不細工な格好をしていて、人に嫌われるが、なんとなく親しみの持てる奴である。 つづく (坂口成夫、アレンケール在住)

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