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アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(28)=体が美しくて猛毒の蛙=解毒にはインジオの薬

ニッケイ新聞 2008年2月29日付け

◇両棲類の話(2)
〔サッポ・クルルー(蟇蛙)〕の続き
 これを台所に放しておくと、昼間は隅のほうにじっとしているが、夜、のそのそと歩き回ってゴキブリや蝎(さそり)などを食べてくれるので助かる。
 邪魔になるときは、箒のさきでチョイチョイと突っつくと、のそのそ歩き出すので、隅のほうに追い払う。ただその糞は体の割に大きくて、犬の糞ほどあるが、始末するのにたいした手間はかからない。
 何年か前、蟇蛙の皮が袋物に珍重されるとかで、ドイツに大量輸出されたことがある。このため蟇が激減してペルナンブーコ州の州都レシーフェ市で物凄い量のコウロギが街に侵入して、街路や家の中まで一面のコウロギだらけで、着物を食い荒らされるやら大騒ぎしたことがある。これは蟇がいなくなったために、コウロギが大発生したものだ。金儲けに夢中になって、自然の循環の一部を破壊したツケが回ってきて、かえって損害のほうが大きかった一例である。
 
〔ペレレカ〕
 雨蛙、青蛙である。何種類あるか知らないが、たくさんで家の中にときどき侵入する。たまには人の額(ひたい)にペタリと貼りついて、キャーと悲鳴をあげさせたりする。
 中型のイボ蛙はすべてサッポ・クルルーと呼ぶが、種類も鳴き方も種々で雨季中賑やかである。
 この辺(アレンケール付近)にはいないが、アルゼンチンや南部の州あたりには、色彩の美しい蛙がいる。そして猛毒を持っているのがいる。誤って掴みでもしたらたいへん、体のネバネバした液体に毒があるらしく、皮膚から毒が侵入して、内蔵を冒し、死に至る。
 ある高名な動物学者がこれにやられて命が危うかったとき、インジオの酋長ラオニーが、部落の祈祷師を連れてきた。薬木、薬草でつくった汁を飲ませ、かつ沐浴させたところ、最新の医学でもどうにもならなかった苦痛が和らぎ、眼にみえて回復し、自由に歩けるまでになった。が、内臓が長い間毒に痛めつけられたせいか、力尽きたような形で亡くなってしまった。もっと早く治療を受けていれば、助かったと思われるが。
 酋長ラオニーは、歌手スティンギと共に世界中を歴訪、日本にも行って、アマゾンの自然を護る運動をした。例の下唇が大きく突出して、今にも人を取って食いそうな、奇怪な顔をしていた。根は人のよいオジサンである。また祈祷師は、オマジナイもするが、薬木、薬草の知識が深く、インジオの病気は専らこれに頼る。なかには、これは、と首をかしげるようなヘンなのもあるが、なるほどと思わせるものが大部分である。長い間の経験の積み上げによる知識である。
 インジオの薬などといって馬鹿にしてはいけない。たくさんの薬が動植物から作られ、みんなそれぞれに効果をあげている。
 それにしても恐ろしい毒を持った蛙である。そのため、蟇をみると怖がること一方でなく、大の男がすくみ上がることもあって、大笑いである。
 サッポ・クナワルーというのがいる。一種の蟇であるが、木の洞の中や枯葉の山の下に浅い鍋状の巣をつくる。どうしてつくるのか知らないが、その巣は、樹脂状のものでできていて、それを燃やすと、一種の芳香を持った煙がもくもくと出る。これを例の祈祷師が薬に使ったり、オマジナイに使ったりする。つづく (坂口成夫、アレンケール在住)



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