コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年2月29日付け

 熊本県人会の絵画教室の講師、坂本マリーナ明美さんの名刺の日本語の肩書は看護婦である。日本では看護婦は「差別語」だとして遠ざけられたが、マリーナさんにとっては誇りだ▼先頃、教室の生徒募集に来た。教室の宣伝は控えめにして、力説したのは県人会館を高齢者のデイサービスの空間としてとらえよ、であった。今後一層押し寄せてくる高齢化に、県人会活動を通じて、なんとか対処できないか、を真剣に考えているのがわかった。会館で「セラピーができればいい」と言う▼セラピーは簡略にいえば、心身を癒す療法のことである。病人ばかりを対象としているわけではない。マリーナさんのみるところ、日系人には夫婦だけの高齢者、独りきりの高齢者が多い。近い将来、ますます増えると予測している。孤独が原因となって何らかの問題が起きる。それを未然に防げるように、あるいは緩和できるように、会館を所有している県人会は考えようというのである▼例えば、マリーナさんは、一週間の内、週日の一日を絵画教室に割いている。いい意味の「一日遊んであげます」のサービスだ。県人会は、こうしたサービスがもっとできれば、という▼言うは易し、特に実行の際は人材の面で多くの困難があるのは、デイサービスを実際推進している人ならわかる。あるのは「空間」だけで、ほかは何もないところからスタートしなければならないからである。ただ、二世の県人会関係者にこうした意識があるのは嬉しい。(神)