コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年3月29日付け

 東京の慎太郎知事も「参ったな」が本音ではないか。05年に設立した「新銀行東京」を救援する法案の審議が難航し、民主と共産の猛攻に「私に責任がある」と都民にお詫びする一幕もあった。零細企業を助けようとつくった「銀行」なのだが赤字につぐ赤字。この月末には累積で赤字1200億円になる▼これを救援したいと、都議会に泣きついたのだが、銀行に関する都知事の失敗は以前にもある。一期目に就任したばかりのときに、大手の銀行に課税することを決めたが、銀行側は裁判所に提訴し東京都は敗訴している。まあ、今回の「銀行」は弱い町工場に融資して立派な企業にしようという趣旨であり、これは評価していい。だが―経営が余りにも杜撰に過ぎた▼石原都政は善政だし、これまでも大きな実績を誇る。テロや地震を想定した訓練では自衛隊と戦車を出動させてあっと驚かした。確か―銀座の真中を戦車が堂々と通り、関東大震災のような災害になれば、こうした事態もありうるとした知事の見識はもっと認められていい▼ところが、ある有力紙は、猛反発して非難し都政を木っ端微塵に叩いたけれども、もうこんな論調は少ない。神奈川や埼玉などの近隣諸県との連携を強めたのも大きい。最近では「東京五輪」の誘致計画が面白い。これは名高い都市が幾つも「わが町に」と叫んでいるのだから実現は容易ではなく難しい。だが、この「東京五輪」は、国民に夢を与え、希望の文字をしっかりと植え付けた。だから―「銀行」のキズは胸の奥に収め再び東京オリンピックをのような楽しくも明るい東京の政治を目指してほしい。 (遯)