コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年4月3日付け

 百万人が読んでいるというドイツの最大手週刊誌「シュピーゲル」の今週号には、サンタカタリーナ州ポメローデ市のことが四頁に渡って特集されている、とBBCブラジルが報じた。三十万住民の八割がドイツ系子孫で、ドイツ文化の伝承がしっかり行われ、同紙は「ドイツよりもドイツらしい」と絶賛している▼BBC記事によれば「二百年前に入植した初期移民の伝統が今も生きている」と書いてあるらしいが、その町へのドイツ移民初入植は一八六一年だから、少々調査不足か。「ドイツ本国では健康ブームで脂肪分を少なくしてしまった郷土料理が、ここでは昔そのままの味で楽しめる」とか▼初期入植者の大半がドイツのポメラニア地方出身者で、そこからこの町の名前が生まれた。ちなみに犬の「ポメラニアン」種は、ここが原産地だ。ポメラニア語という独自の言語を話す西スラヴ系のポメラニア人は、ドイツでは少数民族だった。移住してから他のドイツ系と混交し、ドイツ化してゲルマン・アイデンティティを強めた▼それでも家庭ではポメラニア語を使い続け、今もポ語とポメラニア語のバイリンガルがたくさんいるという▼興味深いことに、第二次大戦でポメラニア地方の大半はポーランド領にされ、多くの住民は東ドイツに避難し、発祥の地でポメラニア語を使う者はほとんどいなくなった▼つまり、ブラジルにしか残っていない。百五十年後にそのような文化がしっかりと継承されているのは素晴らしいことだし、本国メディアからその価値を認められることは、さらに嬉しいことだろう。さて、あと五十年後のコロニアはどうなっているか。(深)