国家移民審議会が新方針=デカセギ対策にも乗り出す=在外ブラジル人の避難所創設へ

ニッケイ新聞 2008年4月11日付け

 ブラジル日本商工会議所の企業経営委員会(石川清治委員長)主催の、国家移民審議会のパウロ・セルジオ・デ・アウメイダ会長ら七人によるブラジルの出入国管理に関するセミナーが行われ、約七十人が参加した。
 第一部で日系社会の専門家からデカセギの現状に関する説明を受けた同審議会メンバーは、在外ブラジル人の避難所ともいえる「カーザ・ド・ブラジル」を創設するなどの出移民政策のアイデアを紹介するなど意見交換をした。移民行政機関の長と日系社会の専門家が、デカセギ問題を直接論じ合うのは初めて。
 本来は国内の入移民政策を取りしきってきた同審議会だが、昨年来、労働大臣の意向で、出移民して国外就労するブラジル人をも業務の管轄とする方針に変更されてきた。
 そのため、国外就労者情報センター(CIATE)の佐々木リカルド弁護士、文化教育連帯協会(ISEC)の吉岡黎明理事長、同メンバーの渡部和夫元判事から、デカセギの現状に関する説明を受けた。
 アルメイダ会長は「政府は在外労働者の問題に注目している。何が起きているか、何ができるか、は最大の関心事と言っていい」と語った。
 従来はイタマラチー(ブラジル外務省)が中心となって対策を講じてきた在外ブラジル人問題だが、労働省の立場から問題解決への検討を始めたという。手初めに昨年、外国生活の注意事項を記した小冊子「外国のブラジル人」を十万部つくり、パスポート発行時に無償配布を始めた。
 審議会の役割変更を明確にするために、「Conselho Nacional de Imigracao」から「Conselho Nacional das Migracoes」(国家出入移民審議会)に変更して、新しく学術関係者も入れる改正案も提出し、連邦議会での承認を待つばかりになっているという。
 ブラジル工業連盟(CNI)のクリスチーナ・リマ代表は、審議会には教育省代表もいることから「子弟の教育問題なども国家的に取り組んでもよいのでは」との意見をのべた。
 イタマラチーに働きかけ、ボリビアとの二国間協定で相互に無資格滞在者に合法永住資格を与えるという新しい動きも主導した。フォルサ・シンジカルのエリアス・フェレイラ代表は「ボリビア人三万人を合法化したが、まだ八万人も残っている。これは社会にカオス(混沌)を作ることであり、なんらかの合法化対策を考えなくては」と語った。
 第二部では、同審議会本来の職務である外国人受け入れ方針について、アウメンダ会長が説明した。
 国家商業連盟(CNC)のマルジョライネ・ド・カント代表は「いろいろなことを学ばせてもらった」とし、アルメイダ会長は「全く知らなかったコムニダーデの現実を知ることが出来た。大変有意義な会合になった」と感謝し、今後の審議に役立てると語った。
 なお、ニッケイ新聞の取材に対し、九八年に出されたアネスチア(無資格滞在外国人に永住権を与える恩赦)から十年が経過した件についてアルメイダ会長は、「それは法務省の管轄だ。私は出るかどうか知らない」と答えた。