コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年4月15日付け

 福田首相と民主党の小沢党首の党首討論は緊迫した空気が漂い議論らしい論議を尽くしたのは大いに結構。パソコンで産経新聞のかなり長文の記事を見たが、こんな丁丁発止のやりとりは珍しいのではないか。日ごろは温厚でなる首相も、日銀人事での民主党の対応には我慢しきれなくなったのか「権力の乱用」と迫り、激論を述べる▼まあ―政府と与党が提案した総裁と副総裁の候補が参議院で四人も否決されたのだから―首相としても腹が立つ。小沢党首は「財務省出身の官僚が日銀総裁になるのはおかしい」と反論。確かに内閣の出した武藤敏郎、田波耕治両氏ら4人は財務省の事務次官や幹部であり、小沢理論によれば「不適格」になる。尤も、民主党にも8人かの造反組がいたし、反小沢派もかなりいるようで複雑なのである▼と、ここまでは「政治の流れ」として受け止めたい。だが―ここから話は始まる。民主党の山岡賢次国対委員長が、副総裁候補だった前財務省財務官の渡辺博史氏(一橋大学教授)に電話し「副総裁起用に反対する」と通告したの疑いが浮上し国会での騒ぎが大きくなってきた。渡辺氏はコメントを避けているし、山岡氏も「プライベ―トなこと」とし詳細を明らかにしていないようだが、もし電話の内容が事実とすれば間違いなく重大な問題になる▼中川秀直・元自民党幹事長は「国会同意人事ル―ルを逸脱した政治介入」と批判、党内には徹底究明を求める声が強い。白川日銀総裁が決まったのはいいが、どうやら日銀人事をめぐる最終的な決着はしばらく続きそうだし、民主党の体質も問われるのではないか。(遯)