パ国イグアスー移住地=「ふるさと巡りの旅」で植林した=「交流の森」すくすく育つ=3年続けて経団連の支援決定

ニッケイ新聞 2008年4月24日付け

 【イグアスー発】この一枚の写真がいくつかの貴重な教訓を示唆している。「交流の森」は〇六年九月二十四日、パラグアイのイグアスー移住地に誕生した。ブラジル日本都道府県人会連合会(松尾治会長、当時)が主催した第二十六回「移民のふるさと巡りの旅」一行、八十四名が大型バス二台に分乗して親善交流のため同移住地を訪問したのを機会に、環境保護の一助になるようにとの思いを込めて、移住地の人々と一緒に植林をした。その場所が「交流の森」と命名された(本紙〇六年九月二十八日報道)。
 ヒトの育児と同じように、人工植林の苗木は初期三年間ほどはヒトが手塩にかけて面倒をみなければアリや野生動物や雑草の餌食になってしまうことが多い。植林は容易なようで難しい一面だ。
 イグアスー移住地には日本人会の中に環境保護委員会があり、農協の推薦者(複数)も委員に名を連ねている。この委員会が植えられた樹木に常に目をかけているため、「交流の森」のように、わずか一年半でも著しい成長を見ることができる。
 私たちが住んでいる地球は〃水の惑星〃と呼ばれてきた。ところが、人間社会は「水危機」の瀬戸際にあるのが現実だ。ガソリンなどにはバイオ燃料などの選択肢が残されているが、一リットルのガソリンを製造するのに最大二・五リットルの水が要るという指摘もある。一リットルのバイオ燃料の原料となる作物の栽培には、平均で少なくとも千リットルの水を使うし、小麦一キロに最大四千リットルの水が必要だともいわれている。
 地球上で水に代替物がありそうにない。木があれば地中に水を蓄える。温室効果ガスの要因である二酸化炭素の削減と合わせて、〃水の惑星〃の生命(いのち)を維持するためには、最も伝統的ながら最も堅実な行動が木を植えることだ。
 去る三月二十五日、イグアスー日本人会は日本経団連自然保護基金より三年連続での助成決定の知らせを受けた。一一年に迎える入植五十周年に向けての植林活動と環境教育、Part 3,が対象だ。交流の森に加えて、子供の森、青年の森、鶴寿(老人会)の森、友情の森など十を超える森がすでに誕生している。〃大森小森連鎖反応〃で今年ははさらに増えるであろう。
 〇七年十月にはパラグアイ国会がイグアスー水力発電所建設計画を承認した。日本の有償支援の一つだ。電力供給公社が水源池周囲と流域の保護植林に、いち早く日本人会に参加を強く要請してきたのは、地域住民に対する啓発を視野に入れてのことだ。これまでの行動が評価された結果だあることは論を待たない。小さな一歩でも、堅実であれば大きく羽ばたく可能性が伴ってくることを示唆している。
 イグアスー移住地はパラグアイにおける〃不耕起栽培〃発祥地として認定されている。続いて、南米大陸における日系主導の〃本格的植林活動〃”発祥地と認められる日が来るか、楽しみだ。