お騒がせ天野氏、再暗躍=中沢氏と選挙前に密約か=土地の希望価格は5百万レ=県連「相手にしてない」

ニッケイ新聞 2008年4月30日付け

 コロニアに無視されても嘲笑を浴びても不屈の精神で来伯を続ける怪人、天野鉄人氏(70、東京在住)が性懲りも無く、百周年式祭典の会場変更や独自の県連センター案に関する支離滅裂なFAX文書を県人会などにせっせと送り付けている。リベルダーデ区に所有する四千平方米の土地をちらつかせ、散々コロニアを翻弄してきたのは、ご承知の通り。このお騒がせ男の調整役を買って出ているのが、宮城県人会長の中沢宏一氏だ。「土地の条件がいいことは確か。拒否したら、何もない」と、天野氏の土地を利用したセンター建設を虎視眈々と目論む。本紙編集部は、〃黒い関係〃を続ける二人の間に交された文書を極秘に入手した。それによると、天野氏の土地売却希望価格は五百万レアル――。さて一体、誰が払うの?
 「二世は百姓をやっていればいい」「ブラジルの日本人の日本語はレベルが低い」「今の日系社会の姿は恥ずかしい」「金を出してくれるなら、(プロミスの)神内良一氏の尻を舐めてもいい」との〃妄言〃を連発。誇示してきた日本政府との太いパイプも、実際のところは、〃妄想〃だったことが露呈されてしまった天野氏。
 これまでは、文協などで説明会ならぬ、独演会でその支離滅裂な理屈を「神の啓示」とまくし立て、出席者らの怒りと失笑を買っていたが、最近では表に出ることなく、水面下で活動を続けているようだ。
 唯一の〃パートナー〃である中沢氏曰く、「たくさん来るのでどれがどれか分からない」というほどのFAXを受け取る蜜月の仲。本紙編集部が入手した、その一部である中沢氏宛に今月三日付けで送られたものを紹介しよう。
 お世辞にも達筆とはいえない天野氏の直筆で、「現時点の考え方を記します」と各県人会に送る前に調整を行なったものと見られ、五項目に分かれている。
 「土地を買う。予算は五百万レアル」とあり、購入者は記されていない。
 天野氏が件の土地を入手するため二十数年前に支払った金額は約一億円といわれており、約三倍の値をつけているわけだ。
 もちろん、売るのは所有主である天野氏としか読めないのだが、中沢氏は、「どうにでも取れる。譲る場合でも予算はつけるものですから」と気にも止めない様子だ。
 続けて、その所有権を県連、老人クラブと天野氏が理事長を務めるサンパウロ青年図書館で三分割するとしているところから、売却後もなおコロニアをしゃぶり尽くす魂胆にも見える。
 「ジャパンセンター」としてきた名称も「リベルダーデ日本館(カーザ・ジャポン)」と今回変えており、その主張の一貫性のなさが如実に表れている。
 一方、建築費は「日本政府に要請」と首尾一貫しているのだが、「箱モノには金を出さない」とする日本政府が現在でも国際協力機構を通じた五百万円のみしか出していないことを知っているコロニアに、その〃神通力〃は通用しないことは学習すべきだろう。
 これらの要請を、「今月三十日までに在サンパウロ総領事館と麻生太郎日伯議員連盟会長に提出する」こととしているのだが、中沢氏は、「その役目は県連が最適」と話す。
 「そんな話に乗ったら、県連が恥かきますよ」と一笑に付すのは、県連の山田康夫副会長だ。
 「あの人は(土地という)餌をぶら下げてるだけ。そんなものに誰も振り回されたくないですよ」とかぶりを振りながらも、「土地を無償提供するというなら話は別。だけど、それがないから、誰も相手にしない。県連としてではなく個人的には話くらい聞いてもいいですけどね」とあくまで冷静だ。
 これらの文書のやり取りが行なわれたのは、県連選挙前。中沢氏が県連会長に返り咲くことを予想したうえで、この計画を推し進めようとしたようだが、中沢氏が出馬を取り下げたことから、その目論見もはずれたようだ。
 当の中沢氏も、「土地がなけりゃ、あんな人間とは付き合わないですよ」とあくまでビジネスライクなお付き合いのよう。
 さて、古希を過ぎても、その情熱だけは衰えることを知らない天野氏。夢実現への道は遠く厳しいようだが、今月に続き、来月もまた〃お忍び〃で来伯する予定だという。