コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年5月13日付け

 宮中晩餐会では燕の巣のス―プに鱸の酒蒸、鴨のロ―ストに野菜サラダ。デザ―トはアイスクリ―ムだったそうだ。中国の胡錦濤主席を迎えての夕食会で皇太子や秋篠宮ご夫妻らも臨席してご歓談なされたのは真に喜ばしい。とりわけ陛下と胡主席が将来の日中友好に向けて語られたのがいい。10年前―江択民主席が訪日し「反日発言」したのと比べると雲泥の差がある▼天皇陛下は、遣唐使が長安(現在の西安)で学び、日本に持ち帰った文化と文明が、律令制度を生み、日本の発展に大変な功績を果たしたと話され、鑑真和尚が艱難を乗り越え来日し仏法を広めたと称え、将来もこうした日中親善を深めたいと述べられると、胡主席は「今新たな歴史的なスタ―トラインに立ち、さらなる発展のチャンスに恵まれている」と協調の大切さを語る▼中国は今や大国であり、年内にも国内総生産(GDP)は日本を抜き世界第2位になるの予測が強い。勿論、沿岸部の驚異的な発展と内陸部の貧困という課題があるけれども、近未来的には、間違いなく繁栄を誇る国になる。クリントン前米大統領が訪中の際は、500名を超す有力財界人が特別機で随行し大型商談を繰り広げたし、日本企業が駆けつけるのも、市場としての魅力に富むからに他ならない▼首相との会談でも、日本の常任理事国入りを肯定する発言をし、新しい視点からの日中の結びつきに前向きな姿勢を示したのは高く評価したい。あの「日中戦争」に対しては深い反省と謝罪も大切だが、これに拘って親善が損なわれてはいけない。胡主席訪日の功績は、この友好への道を開いたことにある。(遯)